第一章

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・幼稚園

恵(けい)、門を開けて中に入る
下駄箱の前で大谷(おおや)と話している千尋(ちひろ)、恵を見つける

千尋 「恵ちゃーん!」

恵に駆け寄り抱きつく千尋
恵、千尋を抱きしめる

恵M 「あれから四年。千尋はこんなに大きくなりました」

恵  「ちー、先生にご挨拶は?」
千尋 「うん」

千尋、離れて大谷の方を見る

千尋 「せんせーさようならっ」
大谷 「さようならっ。また明日ね」

大谷、手を振る
恵、頭を下げて千尋の手を取り園を出る

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・春宅前

恵、千尋、手を繋ぎながら笑って話をしている
家の前に春(はる)の姿を見つける

千尋 「パパー!」

千尋、春の元へ走っていく
春、千尋を抱き上げる

春  「おかえりなさい」

春、千尋にキスをする
恵の方を見ると微笑む春

三人、笑いながら話をして家の中に入っていく

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・仏間

仏壇に向かって手を合わせている恵
写真の中で笑っている美紀(みき)

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・リビング

壁に額の中に入った美紀の似顔絵が飾ってある

春  「恵ちゃん紅茶でいいー?」

キッチンに立っている春
千尋、洗面所から戻ってくる

恵  「いや、俺今から店行くからいいよ」
千尋 「えー?恵ちゃんもう帰っちゃうの?」

千尋、恵を見上げる
千尋の頭を撫でる恵

恵  「うん。ごめんな」
千尋 「む〜〜」

剥れる千尋

春  「ご飯食べていけばいいのにー」
恵  「あんたまで何言ってんだよ」

笑う

恵  「また今度な」
春  「そう。わかった。ありがとね、お迎え行ってくれて」

玄関の方へ行く

恵  「いいよ。暇だし」
春  「あ、そうだ。お義母さんが寂しがってたよ。恵ちゃんが全然顔見せてくれないって」
恵  「えー?こないだ行ったけど」
春  「いつ?」
恵  「えー……と、いつだったかな…」
春  「それはこの間って言わないよ」

笑う

春  「そうそう、リビングに大きな写真が飾ってあってね」
恵  「え?」
千尋 「そうだよ!恵ちゃんのお姫様の写真っ!すっごく可愛いのー」
恵  「はぁッ!?分かった行く。すぐ行く。用事が出来た」

恵、怒る
笑う春と千尋

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・春宅前

春、千尋を抱いて見送りに出ている

恵  「じゃーな」

行こうとする恵

千尋 「恵ちゃんっ!」

振り返る恵

恵  「?」
千尋 「パパ」

千尋、恵の方を指差す
近づく春

春  「?」

千尋、両手を伸ばして恵の頬に触れキスをする

恵  「……」

恵、春と目が合う
少しすると逸らす恵

千尋 「おやすみなさい」
恵  「おやすみ」

恵、微笑んで千尋の頭を撫でると手を振って去っていく

春  「……」

春と千尋、しばらく恵の後姿を見ている

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・路地

夕暮れの道を一人歩いている恵

恵M 「この四年間。変わったことは一つも無かった。俺と春は幼馴染のまま。何も変わらない」

バーに入っていく恵

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・バー

酒を作りながら話をしている恵

客A 「恵ちゃん遊ぼうよ〜」
恵  「えー?何して遊ぶの」
客A 「いいことして」
恵  「ははっ」

恵M 「でも心がけていることがある」

恵  「そういうことは好きな人とやるんだよ」

微笑む恵を見て驚く客

恵M 「本気で誰かを好きになろう。この左手をしっかり握っていてくれる人を探そう」

客A  「恵ちゃん、どうしちゃったの…」
恵   「どうしたって、当たり前のこと言ってるだけだろ?」
客A  「恵ちゃんがそんなこと言うなんて……」
オーナー「あーら?びっくりしちゃって〜」
客A  「だってこの恵ちゃんがだよ!?」
オーナー「恵も大人になったのよねぇ?」
恵   「俺はずーっと前から大人だよ」
客A  「そんなぁ〜!」

笑う恵

恵M 「あの時ついた嘘は、だんだんと姿を変えたんだ」

客B 「ねぇー、恵ちゃんあたしは〜?」

隣に座っていた女性客が恵を見る

恵  「ごめんね、俺女の人は汚せないんだ」
客B 「なーんだ。そこは変わってないんだ〜。残念」
恵  「はははっ、でも似顔絵描いてあげるよ。描かせて?」
客B 「うそ!?あたし描いてくれるの!?」
恵  「残念だなんて言っておいて、今幸せなんだろ?」
客B 「や〜ん!何で分かるの!?やっぱり恵ちゃん大好き〜」

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・バー

客がいなくなった閉店間際
客が来る

恵  「あ、すみませんもう終わ──…暁(さとる)さん…」
暁  「もうだめ?」
恵  「はははっ、ほんとはね。どうぞ」
暁  「悪いね」

恵M 「この人は相模(さがみ)暁さん。丁度俺が卒業したくらいにここで知り合った。
    カメラマンをしていて、いろんなところを飛び回っている」

恵の前に座る暁
オーナーが奥から出てくる

オーナー「あら、お久しぶり」
暁   「お久しぶりです」
オーナー「いつ帰って来たの〜?どうだった?イタリア」
暁   「それが凄くよかったんですよ今回は。いいところ見つけちゃって」

暁、鞄の中からポラロイド写真を取り出す

恵  「わぁっ、見たいみたい!」
暁  「ポラで悪いんだけどね」

恵とオーナー写真を見る

恵  「すっげぇ……これどの辺?」
暁  「フィレンツェの海辺。これがいい具合に田舎でさ」
恵  「……すごい。綺麗」

恵、レンガ塀からみる海に夕日が沈んでいる写真を見て言葉を無くす

暁  「いいだろ?」
恵  「うん。こんなの見たことない…」

暁、微笑む

暁  「この近くにあったパン屋さんが凄く美味しくて」

暁、パン屋の主人と写っている写真を見せる

恵  「仲良くなったんだ」
暁  「うん。凄くいい人だったよ。これなんか、おとぎ話の中の世界みたいだろ?」

家屋に囲まれた石畳の路地

恵  「ほんとだ。あー…いいなぁ。俺も行きてぇ…」

恵、ため息をつく

暁   「行けるよ。君だったらすぐあっちにもなれるさ」
恵   「でも俺金ないしさぁ…」
オーナー「あら?もっと働いてもらってもいいのよ?」
恵   「これ以上こんなとこにいたくねぇよ」
オーナー「まぁ!」

オーナー、笑う

暁  「お金…か。ねぇ、君がよかったらなんだけど」
恵  「え?」

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・俊祐宅

俊祐 「モデル?お前が?」
恵  「そう」

恵M 「俊祐(しゅんすけ)は卒業する前からデザインの仕事を始めていて、今では売れっ子デザイナーだ。
    すげぇデカイ家に住んでたり、最近ではブランドを立ち上げたりしている」

恵、ソファに座ってクッションを抱いている
その隣に座っている俊祐

俊祐 「いいんじゃない?お前顔はいいんだから」
恵  「顔はってなんだ顔はって!っつか、顔なしなんだって」
涼子 「なんで?」

涼子(りょうこ)、向かいのソファに座っている

恵  「俺は逆に聞きたい。なんであんたがここにいるんだ?」
涼子 「姉が弟の家にいちゃいけないっていうの?」
恵  「だってお互い一人暮らししてたんじゃなかったっけ?」
俊祐 「違う。男のとこに転がり込んだんだ」

呆れて言う俊祐

涼子 「違うわッ!一緒に住んでいてあげたのよ!そしたら急に出て行けって!あのクソ親父!!」
恵  「お前はそれでいいわけ?」

哀れんだ目で俊祐を見る

俊祐 「もうこれで何度目だと思う…」
涼子 「いいじゃない!こんなに広い家なんだから!あたしの一人や二人いたって何も変わらないでしょッ!
    あたしより稼いでんだからぁ!」
恵  「んでもあんたこの間テレビ出たじゃん。舞台成功したんだろ?」
涼子 「そうよ。あたしももう売れっ子なの」

恵M 「この人は相変わらずこんなだけど、今では有名舞台女優だ」

恵  「だったら──」
俊祐 「恵。察してやれ」
恵  「?」
俊祐 「寂しいんだよ」

涼子クッションに顔を埋める

恵  「なんだ、可愛いとこあんじゃん」
涼子 「い〜〜〜だっ!」

笑う俊祐と恵

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・暁宅

恵  「うわ〜、すっげぇ。お洒落ー」

リビングに入ってきて部屋を見回す恵

暁  「そうかな。ありがとう」
恵  「俊祐んちもすげぇけど負けてないな……」

呟く恵

暁  「え?」
恵  「あ、いや。哉家(かないえ)俊祐っていう友達がいるだけど、そいつんちも凄いんだよね。
    俺もこんな家住みたいなぁ」
暁  「哉家俊祐ってデザイナーの?」
恵  「そうそう。知ってる?」
暁  「この間一緒に仕事したよ。すっごい綺麗な子だよね」
恵  「確かに顔はいいけど…綺麗…?」
暁  「はははっ、君は友達も派手なんだ。そこのソファに適当に座ってくれる?」

暁、カメラの準備をしながら言う
恵、ソファの方へ行く

恵  「っつか、俺こんな普段着でいいの?」
暁  「今日はね。次からは指定するかもしれないけど。これ、正式な仕事じゃないから」
恵  「ふーん。そっか」

暁、写真を撮りだす

暁  「足上げてみて。自分の家でくつろいでる感じ」
恵  「こんな感じ?」

恵、傍にあったクッションを抱く

暁  「そうそう。いいね」
恵  「暁さんって風景写真ばっかりじゃなかったんだ」
暁  「いや、昔はそっちだったんだけどね。そんなこと言ってられなくてさ」
恵  「ふーん。これはどうして?」
暁  「うーん。出来上がってどうなるかは分からないけど、言ってみれば趣味だね」
恵  「趣味?まっ、趣味でプロのモデル使うのもあれだもんね」
暁  「いや、これは君踏まえての趣味」
恵  「?」
暁  「初めて会ってからどんどん変わっていく君に興味をそそられてね」

笑う暁

恵  「変わった?俺が?」
暁  「あぁ。遊びもやめたんだろう?」
恵  「あー、それね。うん」
暁  「何か心境の変化があったんだ?」
恵  「……うん。一応」
暁  「聞いてもいいかい?」
恵  「……俺さ、今まで生きてきて好きになったの一人だけなんだ」
暁  「へぇ…」

驚く暁

恵  「でも叶わない恋だったんだよ。ずっと一緒にいたのに、好きだって自覚したときにはもう遅かった。
    それで俺に出来ることはそいつの幸せを願うことだけだった。あの時からずっと、これからもそう。
    でもさ、俺もいつまでも一人でいるのもなんか寂しいじゃん?
    真剣に人と向き合って、あいつ以外に好きになれる人を探そうと思ってさ」

恵、微笑む
シャッターを切る暁

暁  「好きだって自覚する前から無意識のうちにその人に操立てしてたわけだ」
恵  「いや、やりまくってたんだけどね」

恵、苦笑いをする

暁  「はははっ。でも付き合ったりできなかったんだろう?」
恵  「うん。っつか、好きってどういうことだかわかんなかったな。
    まぁ今でもそれほど理解してるわけでもないんだけどね。
    普通の人がこう、メールとかして一喜一憂してるのとかさ、俺知らないわけ。
    会えただけで嬉しいとかもさ、なんかそういうの感じてみたいよ」
暁  「その人は今どうしてるの?」
恵  「幸せにやってるよ。すっげぇ可愛い子供と暮らしてる」

微笑む恵

暁  「君はちゃんと過去を乗り越えられたんだね」
恵  「ううん。違う」
暁  「え?」
恵  「乗り越えてなんかないよ。ただ俺は嘘を本当に変えただけ。嘘って吐き続けると本当になるんだ」

恵、笑う

暁  「……」
恵  「暁さん?」
暁  「いや、僕もその真剣に向き合う相手に立候補しようかと思ってさ」

笑う暁

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・春宅

ソファに座って千尋を膝に乗せている恵
ぼーっとしている

恵M 「あれってやっぱりそういうことなのか…?」

恵  『どういう…』
暁  『君に気に入ってもらえるように頑張るよ』

恵M 「あの後暁さんはそれ以上何も言わなかった。
    でもあの人だったら──」

千尋 「ねぇ、恵ちゃん」
恵  「へっ?」
千尋 「さっきから何考えてるのー?」

千尋、恵の頬を両手で触れて首をかしげる

恵  「な、何って?」
千尋 「もう。せっかく僕と一緒にいるんだから僕のことだけ考えててよー」

膨れる千尋

恵M 「こいつ……!」

恵  「あーもう可愛い〜」

恵、抱きしめてキスをする

千尋 「アハハッ。それでね、てっちゃんがねー?」
恵  「またその話か……」

恵M 「お前は俺のこと考えてくれないの?」

悲しむ恵

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・春宅

ソファで眠っている恵

恵M 「……なんか…気持ちい…暖かい…。左手の懐かしい感触……」

恵、ぼんやり目を開ける
目の前で誰かの右手を握っている

恵M 「誰の手……っつか、俺どこにいるんだっけ…いつの間に寝て……」

恵  「?」

誰かの足が見える

恵M 「膝の上……」

恵、手を握ったまま寝返りを打って顔を見る

恵  「春……」
春  「おはよう」

微笑む春の顔をぼーっと見ている恵

恵  「……!」

急に飛び起きる

恵  「なっ!なんで!俺っ!?」

慌てる恵を相変わらず微笑んで見ている春

春  「まだ寝ててよかったのに」
恵  「寝ててっていつの間に!?いつ帰って来たんだッ!?」
春  「うーん、三時間くらい前かな?」
恵  「三時間〜〜!?」

時計を見る恵
九時を過ぎている

恵  「もうこんな時間!?っつか何で起こさないんだ!どうして俺があんたの膝枕なんかで寝てんだ!?」
春  「えーっと…」

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・春宅(回想)

春  「ただいまー」

春、帰ってくる
ソファに座って眠っている恵と千尋
肩を寄せ合っている

春  「ふふっ」

微笑んでそれを見る
寝室へ行き、毛布を取ってくる
それを二人にかけようとすると千尋が目覚める

千尋 「ん……パパ……」

千尋、手を伸ばして春に抱きつくとまた眠る
春、微笑むと千尋を寝室へ連れて行く
戻ってくると恵に毛布をかけようとするが、
恵、倒れそうになり春がそれを支える
そのまま隣に座ると恵が膝の上に寝転ぶ

恵  「……ん……」
春  「……」

春、恵の髪を撫でる
すると恵が左手を伸ばしてきて右手を握る

春  「恵ちゃん……?」

名前を呼ぶが眠っている恵

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・春宅

恵  「〜〜〜っ」
春  「恵ちゃんまだ手つないで寝るんだね」
恵  「アホか!寝ぼけただけだッ!なんで三時間も起こさないんだよ!起こしてくれればっ!」
春  「どうして起こすの?」

首をかしげる春

恵  「〜〜〜っ!もういい!俺バイトなんだよ!遅刻だ遅刻!」

恵、バタバタして玄関に行く

春  「そっか、それなら起こせばよかったね。ごめんね」
恵  「べ、別に!これは…俺が悪いから……」
春  「そう?じゃあまたしてあげるよ」
恵  「ばっバカッ!って時間っ!」

恵、靴を履いて家を出る

春  「いってらっしゃい」

恵少し行って振り返る

恵  「その…三時間も膝使ってごめん。ありがとな!」

恵、言うと走っていく
春、その姿を見て笑う

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・バー

恵  「……」

カウンターに立って左手を見ている恵
奥からオーナーが出てくる

オーナー「なーにぼーっと突っ立ってんのよ。遅刻してきて仕事もしないっていうの?」
恵   「えっ?あ、いや…っつか、客いないんだから別にいいだろ」
オーナー「まぁ!いやな子ッ!クビにするわよ!あんたここ辞めたらただのプー太郎じゃない!」
恵   「あーはいはい。ごめんごめん」
オーナー「もうッ!その辺出て客でも捕まえてきなさいよ」
恵   「えーやだよ。めんどくせぇ」
オーナー「この給料泥棒!」

ドアが開く

オーナー「あら」
暁   「こんばんは」
恵   「あれ?今北海道なんじゃなかったっけ?」
暁   「今帰って来たんだよ。貸切?」

笑いながらカウンターに座る暁

オーナー「そうなのよ、もう。沢山飲んでいってね」
暁   「ふふっ。僕にとってはラッキーだったな」
恵   「?」
暁   「今日は君を口説きに来たんだ」

微笑む暁

恵   「え?」
オーナー「あら。じゃああたしはお邪魔ね。よろしくね恵」
恵   「あ、あぁ…」

オーナー奥へ行く

暁  「この間言ったこと、信じてなかった?」

笑う暁

恵  「あー、うん。だって全然そんな感じじゃなかったし…」
暁  「おじさんには興味ないかな」

首を振る恵

恵  「そんなことないけど」
暁  「でも君の好みって可愛い子だよね」

笑う

恵  「いや、そういうわけじゃないよ。そういう奴が寄ってくるだけで」
暁  「じゃあ僕にもチャンスはあるんだ?」
恵  「うん。ん?うんって何かおかしいな。ハハッ」
暁  「ためしにしてみないか?君が憧れてた普通の好きな人とのやり取りを。セックスで始まる恋じゃなくてさ」
恵  「……いいの?」
暁  「君が僕を受け入れてくれるなら、僕は凄く嬉しいんだけど」

微笑む暁

恵  「そっか。うん。ふふっ。よろしくお願いします」
暁  「こちらこそ。じゃあさ、せっかくの貸切なんだし、隣に座って飲もうよ」
恵  「はははっ。うん」

カウンターを出て隣に座る恵

恵  「あ」
暁  「ん?」
恵  「一つ問題があるんだけど」
暁  「何?」
恵  「俺、タチなんだよね」
暁  「ハハハハッ。もうそこまで考えてくれてるのか?それは嬉しいな」
恵  「あ、いや。やっぱそこは大事なところでしょう」
暁  「まぁそれは一番最後のことだけどね」

暁、恵の左手を取る

暁  「初めてを僕にくれる気はないか?」
恵  「え……?」
暁  「それほど好きにならせてみせるよ。恵」

恵、握られた左手を見る

恵  「……」

手を握り返す

恵  「うん」

笑い合う二人

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・俊祐宅

ソファに座っている恵
インターホンが鳴り、玄関に飛んでいく
キッチンにいる俊祐

俊祐 「あっ」

ドアを開けると渚(なぎさ)がいる

恵  「せんせー久しぶり!」
渚  「加々見(かがみ)…びっくりした。久しぶり。元気だった?」

微笑む渚

恵  「うん!ちょー元気ささ、入って入って」

中に入る渚

俊祐 「なんでお前が出てんだよ」

怒る俊祐

恵  「いいじゃーん」

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・リビング

俊祐 「ごめんね、先生。急に来るとか言うからさ」

俊祐、渚とソファに座っている
その向かいに座っている恵

渚  「全然。会えて嬉しいよ」
恵  「ほーらなっ」
俊祐 「はぁ…」
渚  「?」
恵  「別に邪魔しようってんじゃねぇよ。俺すぐ出て行くから」
渚  「え?ご飯、一緒に食べないのか?」
恵  「そこまでいちゃ本気で怒られちゃうもん」
渚  「えー?別にいいよ。なぁ?」

渚、俊祐を見るが
俊祐、額に手をあてて呆れている

俊祐 「先生がいいんならいいよ別に」
恵  「怒んなって。ホントに出て行くから。俺約束あんの」
渚  「あぁ、そうなのか。残念。永久(ながひさ)と?」
恵  「春?違うよ」
渚  「そうなのか」
恵  「うん。っつか二人に聞きたいんだけどさー、デートって何すんの?」
渚  「で、デート!?」
俊祐 「今更お前がそれ聞くのか…?」

驚いている二人

恵  「え?なんで?だって俺デートとかしたことねぇもん」
渚  「今までの相手とは!?」
恵  「今までの相手って遊びでしょ?そうじゃなくて本気のデート。手繋いだりすんの?」
渚  「……」

渚、俊祐を見る

俊祐 「なんなの、お前彼氏でも出来たのか?」
恵  「ううん。彼氏じゃないけど、うーん、好きな人?」
渚  「好きな人って……な──」
俊祐 「誰」
恵  「誰って。あー、そうそう。お前と仕事したことあるって言ってた。
    俺モデルやるって言ってたじゃん?そのカメラマンの相模暁さんって人」
渚  「……」

渚、恵を心配そうに見る

俊祐 「相模…あぁ。知ってるわ。またなんで年上なんだよ。お前の好みはもっと可愛い奴だろ」
恵  「それ暁さんにも言われた。別にそうじゃねぇよ。何?俺が好きな奴できちゃ駄目なの?」
俊祐 「そういうわけじゃねぇけど。お前ホントに好きなのか?そいつのこと」
恵  「うーん。どうなんだろ?好きって感覚が未だに分かってないっつーか。友達以上恋人未満みたいな?」

恵、笑っている

俊祐 「そう」

恵の携帯が鳴る

恵  「あ、暁さんだもしもし?」

渚、恵を見て俊祐を見る
俊祐、少し微笑むと渚の頭をポンポンとする

恵  「うん。わかった。じゃあ後でね」

恵、携帯を切る

恵  「んじゃ俺行くわ。邪魔してごめんね」

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・玄関

恵を見送る俊祐と渚
恵手を振っている
しばらくしてドアを閉め、中に入る二人

渚  「なぁ、二人。上手くいってないのか…?」
俊祐 「二人って?」
渚  「加々見と永久だよ」
俊祐 「上手くいってるよ」
渚  「じゃあどうして──」
俊祐 「恵にとっては上手くいってるんだよ」
渚  「え?」
俊祐 「あいつ五年前、無理やり永久のこと諦めようとしてそのまま自分に嘘を吐き続けてた。
    美紀さんが亡くなった後もずっと、そうしてきたんだよ。
    それが今やっと他の奴を見れるようになってんだ。上手くいってるんだろ」
渚  「でもそれじゃあ」
俊祐 「あいつが幸せなら俺はあいつのこと応援するよ」
渚  「俊祐……」

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・バー(いつもの店じゃない)

テーブル席に座っている恵と暁

恵  「でさ、そのちーが哲平の話ばっかりすんの。俺がいるのにー」
暁  「ふふっ、その千尋くんが恵の好きだった人の子供なんだ?」
恵  「…うん。そう」
暁  「過去のこと聞かれるのは嫌?」
恵  「え?あー、いや。別に。もう終わったことだし」
暁  「そう。じゃあ聞いてもいいかな」
恵  「うん」
暁  「いつから好きだったの?」
恵  「うーん。いつからだろ。自覚したときにはもう遅かったって言ったじゃん?
    ホントにそれまでちゃんとそいつのこと好きだって気がついてなかった。
    生まれた時からずっと傍にいて、いなくなることなかんか無くて、いい意味で空気みたいな存在だった。
    いて当たり前。ずーっと隣にいるんだと思っててさ。まぁそんなこと思ってたから駄目だったんだけどね」

恵、笑う

恵  「だからいつから好きだったとか分かんない。それこそ一目惚れしてたのかもしれないしね」
暁  「今でも傍にいるんだろう?本当に好きじゃなくなったのか?」
恵  「うん。俺ね、姉ちゃんが死んだ時、俺がこの先こいつの傍にいてやろうって思わなかったんだ」
暁  「……」
恵  「自分でもどうしてだかわかんない。嘘吐きながらも春のことまだ好きだったのに、
    一番支えてやるべき時に、そうは思わなかった。
    姉ちゃんに手紙貰って、姉ちゃんが傍にいろって言ってても、俺はもう一度あいつの手を取ろうと思わなかったんだ。
    それってさ、嘘が本当になったってことじゃない?」

笑っている恵

暁  「……嘘が本当に嘘かもしれないってこともあるよ」
恵  「え?どういう意味?」
暁  「いや、僕は自分で自分の首を絞めたくはないからね」

笑う暁

恵  「?」
暁  「はははっ、いいんだ。ねぇそれより」

暁、恵の手を取って指に触れる

暁  「君って指細いよね。何号なの?」
恵  「え?あぁ、よく言われる。十三号」

春  『恵ちゃんの指って細いよね』

恵  「っ……」
暁  「どうかした?」
恵  「え?ううん。なんでもない」

笑う恵

暁  「女の人みたいな指してるね」
恵  「あははっ」

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・春実家(回想)

春の部屋で二人でいる
春、恵の右手の指に触れている

春  「恵ちゃんの指って細いよね」
恵  「えー?そうかー?」
春  「うん。ホラ、僕の指太い」

春、隣に並べる

恵  「っていうか、春の手がデカい」

恵、春の右手に重ねる

恵  「指なげぇー。なんで?身長あんま変わんねぇのに」
春  「女の子の手みたい」

春、微笑んで恵の手を握る

恵  「あ、馬鹿にしたな」

剥れる恵

春  「ふふっ、そうじゃないよ。恵ちゃん指何号?」

春、右手薬指に触れる

恵  「えーと、何号だろ?知らん」
春  「指輪しないの?測ってあげる」

春、工具箱からメジャーを出す
右手薬指にメジャーを巻く

恵  「なんで右手薬指?普通左手じゃねぇの?」
春  「左手は結婚するときね」
恵  「ふーん……」
春  「うわ、十三号だって。細い…」
恵  「うわってなんだうわって!」
春  「……」
恵  「春?」

春、急に恵の指に噛み付く

恵  「ギャー!何すんだッ!」
春  「何か見てたら食べたくなった……」
恵  「アホか!もう、歯形がついた…」

恵、指をさする
それを見て笑う春

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・春宅

ソファに座って左手を見ている恵

恵  「……」
春  「どうしたの?手痛いの?」

春、寝室から出てくる

恵  「えっ?いや、別にそんなんじゃないけど…。ちー寝たの?」
春  「うん」

春、隣に座る

恵  「……」
春  「……」
恵  「……」
春  「……」
恵  「俺帰るわっ!」

恵、急に立ち上がる

春  「え?今日バイトない日でしょ?」
恵  「そうだけど…」
春  「ご飯食べていきなよ」
恵  「……」

恵の携帯が鳴る

恵  「あ、ごめん」
春  「ううん」

恵、携帯を開くと画面を見て微笑む

恵  「もしもし?」
暁  『どうしたの?何かいいことあった?』
恵  「え?どうして?」
暁  『声が笑ってるよ』
恵  「あー。ううん。なんでもないよ。ふふっ」
暁  『そう?今から会えないかな。また写真撮りたいんだけど』
恵  「うん!いいよ」

恵、笑う

恵  「うん。わかった。じゃあまた後で。うん。じゃあね」

携帯を切る恵
春と目が合う

恵  「あー、あの。用事できたから」
春  「そう。わかった。楽しそうだね。俊祐くん?」
恵  「え?いや、違う…」
春  「…そっか。すぐ出るの?」
恵  「うん。もう行く」

玄関へ行く二人

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・玄関

恵  「じゃあまた」

恵、手を振る

春  「気をつけてね」

笑って見送る

春  「……」

後姿を黙って見ている春

千尋 「パパ…?」

千尋、眠い目を擦って春の服を持っている

千尋 「恵ちゃんは…?」

春、千尋を抱き上げる

春  「帰っちゃった」
千尋 「今日はご飯一緒じゃなかったの…?」
春  「うん。また今度ね」
千尋 「いっつもそうだねー…」
春  「…そうだね。もう寝なくていいの?」
千尋 「うん。ご飯食べる」
春  「そう。じゃあ準備しようか」
千尋 「はーい」

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・暁宅

ソファに座っている恵

春  『そっか…』

恵  「……」
暁  「どうしたの?電話ではあんなに元気だったのに」

暁、微笑む

恵  「そんなことないよ」
暁  「ならいいんだけど。何か悩んでるんだったら聞くよ」
恵  「……。ううん。それより、俺今日一ついいことがあった」
暁  「いいこと?」
恵  「うん。暁さんから電話かかって来てさ、何か嬉しかったんだ。
    これって俺が感じてみたかったことの一つじゃない?」

笑う
暁、恵の笑顔を見て微笑むと恵を引き寄せる

恵  「……」

キスをする

恵  「暁…さん…」
暁  「嫌だった?」

恵、首を振る

暁  「君がそんなに可愛い顔すると思わなかった」

もう一度キスをする

恵  「ん…っ……普段の俺が可愛くないってこと?」
暁  「いや、そういうとこも可愛いよ」

キスをするがすぐ離れる

恵  「……」

名残惜しそうに見る恵

暁  「そんな顔しないで」

恵の頬に触れる

暁  「我慢できなくなる」
恵  「え……?」
暁  「まだそこまでじゃないだろ?」
恵  「……」
暁  「いいよ、急がない。ゆっくりでいいから。僕のものになってくれ」

暁、笑うと恵の左手を取る

恵  「?」
暁  「こういうの、嫌だったらしなくてもいい」

暁、左手薬指に指輪をはめる

恵  「え?」
暁  「好きだよ」

暁、左手にキスをする

恵  「……」

恵、暁に抱きつく

恵  「ありがとう。俺も好き」

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第二章

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・俊祐宅

恵  「ねぇ先生。入れられるのってどんな感じー?」

恵、ソファに寝そべっている
その向かいに座っている渚

渚  「はぁ!?」
恵  「先生ネコでしょ?どんな感じ?」
渚  「ど、どんなって…っ」

渚、困っていると俊祐が買い物袋を持って帰ってくる

俊祐 「なに、どうしたの」
恵  「入れられる側の感想を聞いてんの」

渚、俊祐に助けを求める視線を送る

俊祐 「お前そこまでそいつのこと好きなの?」

俊祐、ソファに座って煙草に火をつける

恵  「好きだよ。ほら、見て」

恵、指輪を見せる

渚  「……」
俊祐 「物に釣られたか」

笑う俊祐

恵  「違ぇよ。俺ホントにあの人のこと好きだよ。
    あの人だったらいいと思う。セックスなしでも一緒にいるだけで楽しいし、そういうのが普通なんじゃないの?」

恵、ソファに寝転びながら左手を見ている

俊祐 「お前がいいんだったらそれでいいんじゃねぇの」
渚  「……」

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・実家

リビングに入る恵

母  「あら、お帰りなさい」
恵  「ただいま」
母  「丁度いいとこに来たわ。これ春くんに渡してきてくれない?」

タッパーに入った煮物を出す

恵  「えぇ?何で俺が」
母  「いいじゃない、家近いんだから」
恵  「……」
母  「何か用事でもあるの?」
恵  「別に」
母  「だったらお願い。ね?」
恵  「分かった」

恵、タッパーを取るとリビングの壁に飾ってある写真を見る

恵  「母さん、あれ外せって言っただろ!?いつんなったら外すんだよッ!」
母  「あら、いいじゃない。滅多に帰って来ないだから」
恵  「そういう問題じゃねぇ!絶対外せよ!」

恵、リビングを出て行こうとする

母  「恵。何か用事があったんじゃないの?」
恵  「別に。顔見に来ただけ」
母  「そう」

母、微笑む

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・街

歩きながら携帯を取り出して電話をかける

恵  「もしもし?」
春  『恵ちゃん?どうしたの?』
恵  「母さんが煮物持ってけって。今家?」
春  『そう。今ちょっと出先なんだ。でももう帰るから家入ってて』
恵  「あー、分かった。ちーは?」
春  『まだ幼稚園』
恵  「なら俺迎えに行くわ。あぁ、うん。じゃあ」

電話を切って歩いていく

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・街

幼稚園から出てくる恵と千尋
手を繋いで歩く

千尋 「ねぇ、恵ちゃん。今日はご飯一緒?」
恵  「え?」
千尋 「恵ちゃんいっつも今度ばっかりなんだもんー。三人でご飯食べようよ」
恵  「あー、うん…」
千尋 「今日はお仕事ある日ー?」
恵  「……ううん。ないよ」
千尋 「だったら今日はダメ?」
恵  「……」
千尋 「恵ちゃん?」
恵  「うん。分かった。一緒に食べよっか」

恵、微笑む
千尋喜ぶ

千尋 「わーい」
恵  「……」

恵、左手を握る

千尋 「あー!たぬきさんだー」

千尋、手を離して走っていく

恵  「狸!?っておいちー、一人で行くな!」

千尋、戻って来て恵の左手を引っ張る

千尋 「あそこ!たぬきさーん」

千尋の指差す方を見ると塀の上にフサフサの猫がいる

恵  「ちー、あれは猫だ」

笑う恵
千尋、恵の左手を見ている

恵  「?」
千尋 「恵ちゃん。これパパに貰ったの?」

千尋、恵を見上げる

恵  「え?」
千尋 「これ、パパに貰ったの?」

千尋、指輪に触れる

恵  「…ううん。違う人」
千尋 「ダメだよ。ここは特別の指なんだよ?好きな人に貰った物しか付けちゃダメなの」
恵  「うん。好きな人に貰ったんだよ」
千尋 「え?」

千尋、不安気に恵を見る

千尋 「違うでしょ?恵ちゃんの好きな人はパパだもん。パパに貰った物しか付けちゃダメ」
恵  「……ちー」

恵、千尋の目線にしゃがむ

恵  「俺春のこと好きだけど、そういう好きじゃないんだ」

千尋、首を振る

千尋 「違うもん。恵ちゃんはパパのこと好きだよ」
恵  「ちー。俺には別の恋人がいるんだ」

千尋、涙目になる

千尋 「いないよ。そんなの違うもん。恵ちゃんはパパのこと好きなんだもん」
恵  「ちー…」
千尋 「じゃあパパは一人ぼっちになっちゃうよ」

千尋、零れる涙を両手で拭く

恵  「ちー、泣くなよ。一人ぼっちなんかじゃないだろ?ちーだっているし、ママがいるじゃん」

恵、千尋の頭を撫でる

千尋 「違うもん。パパは恵ちゃんのことが好きなんだよ」
恵  「え…?」
千尋 「ずっとずっと、恵ちゃんが好きだったんだもん」

千尋、声を上げて泣き始める

恵  「ちー…」

千尋、恵に抱きつく
恵、千尋を抱き上げると歩き出す

恵  「……」

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・春宅前

家の前に春がいる
恵に抱かれたまま眠っている千尋

春  「おかえり。寝ちゃったの?」
恵  「うん…」

春、千尋の顔を見て頬に伝う涙跡に触れる

春  「何かあった?」
恵  「ごめん。俺が泣かせた…」
春  「喧嘩でもしたー?」

笑う春
玄関のドアを開ける

恵  「…うん。狸か猫かで…」
春  「狸か猫?なーにそれ?」

笑う春

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・リビング

ソファに座っている恵
寝室から春が出てくる
俯いている恵

恵  「俺今日飯食っていい?」
春  「え?うん。いいよ」

驚く春

恵  「ちーと約束したんだ。起きて俺いなかったら約束破っちゃうじゃん。ちーに嫌われたくないしさ」
春  「嫌わないよ。丁度良かった。今日はお鍋にしようと思ってたんだ」

春、キッチンへ行く

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・キッチン

冷蔵庫を開けている春
そこへ恵が来る

恵  「俺も手伝うよ」
春  「そう?恵ちゃん料理上手いから助かるなー」

微笑む春
恵、袖をまくって手を洗う
隣に立つ春
左手の指輪に気がつく

春  「それ……」
恵  「え?あ、あぁ…。こんなのつけて料理しちゃダメだよな」

恵、笑いながら指輪を外してポケットに入れる

春  「……」
恵  「ほら、鍋だろ?何すんの?」

恵、笑う

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・リビング

テーブルの上には食事の用意が出来ている
ソファに座っている二人
何も話さず、時計の音だけが響いている

春  「どうしたの?その指輪」
恵  「え…?」
春  「貰ったの?」
恵  「……うん」
春  「そう」
恵  「お、俺好きな人できたんだ。付き合ってんの。その人と」

恵、笑う

春  「……」
恵  「今度紹介するよ。すげぇいい人だか──」

春、恵の左手を引き寄せてキスをする

恵  「っ─!何すっ…ん……んっ!」

春、恵を抱きしめる

春  「他の人のものになんかならないで」
恵  「何言って──」
春  「君が好きだ」
恵  「っ!」

恵、春を突き飛ばす

恵  「今更何言ってんだよ…最低だ」

恵、出て行こうとする

春  「恵ちゃん─」

その左手を掴もうとするが届かない
家を飛び出していく恵

春、その場で俯く
絨毯の上に落ちている指輪を見つける
拾い上げて玄関の方を見る

春  「……」

指輪を握り締める春

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・街

夜の道を歩いている恵
泣いている

恵  「っ……ぅ……ぅぅ…」

春  『君が好きだ』

恵M 「なんであんなこと言えるんだよ……どうして春があんなこと言うんだ──…」

恵M 「俺の嘘の意味ってなんだったんだ──」

左手で涙を擦る
指に違和感を感じる

恵  「っ…!指輪……」

恵、来た道を振り返る

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・自宅

ベッドに寝そべっている恵
棚の上に置いてあるシルバーのピルケース

恵M 「きっと忘れてきたんだ。でも取りに戻るなんかできるわけないだろ。どんな顔して会えばいいんだよ」

ピルケースを見る恵

恵  「……」

千尋 『ねぇ、恵ちゃん。今日はご飯一緒?』
千尋 『わーい』

恵M 「ちー…。ごめん。もう約束守れない」

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・春宅

ソファに座って頭を抱えている春
物音がする

春  「……ちー」

千尋、眠い目を擦って出てくる

千尋 「パパ?泣いてるの?」

千尋、春の傍に駆け寄る

春  「ううん。泣いてないよ」

春、微笑む
千尋、春に抱きつく

千尋 「恵ちゃんは?」
春  「ごめんねちー。恵ちゃん怒らせちゃった」
千尋 「ご飯一緒じゃないの…?」
春  「…うん。ごめんね。でも──」
千尋 「パパのせいじゃないよ。僕のせい。パパごめんね」

千尋、胸に顔を埋めて泣いている

春  「え?」
千尋 「僕が言っちゃったの」

千尋、春から離れて涙を拭きながら話す

千尋 「パパが恵ちゃんのこと好きなの、恵ちゃんに言ったの。ごめんなさい」
春  「ちー…」

春、千尋の頭を撫でる

千尋 「だって恵ちゃんもパパのこと好きだもん。それなのに違うって言うの」
春  「そっか」
千尋 「パパ恵ちゃんのこと嫌いにならないで。僕、恵ちゃんに謝るから」
春  「ちー。さっきね、恵ちゃんに好きって言っちゃった」

微笑む春

千尋 「え?」
春  「パパ振られちゃった」

春、千尋を抱き寄せる

千尋 「嘘だ」
春  「ううん。ほんと。でもねちー。僕恵ちゃんのこと嫌いになんかなれないんだ。
    小さい頃からずっと好きだったから。
    恵ちゃんがパパのこと嫌いだって言っても、僕は嫌いになんかなれないんだ」
千尋 「パパ恵ちゃんのこと捕まえにいってよ」
春  「……」

ぎゅっと抱きしめる

千尋 「パパ」

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・俊祐宅

ドアを開けると恵が立っている
俊祐の後ろに渚がいる

恵  「あ、先生もいたんだ…ごめん。邪魔しちゃ悪いから今度でいいわ」

恵、去っていこうとするが俊祐腕を取る

俊祐 「入れよ」
恵  「……」
俊祐 「今更俺に遠慮とかすんな。気持ち悪ぃ」
恵  「……ごめん」

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・リビング

ソファに座っている三人

恵  「春に好きって言われた」
渚  「え?」
俊祐 「……」

俊祐、煙草をふかす

俊祐 「で?俺もだよって?よかったじゃん。おめでとう」
渚  「俊祐」

渚、俊祐を睨む

恵  「俺はもう春のこと好きじゃねぇんだ。そんなことあるわけないだろ」
俊祐 「だったらなんだよ。断ってざまあみろって?」
恵  「違う」

恵、頭を抱える

俊祐 「何がそんなに悲しいんだよ?相模さんとよろしくやってんだろ?
    そこで永久に告られて気持ちでも揺らいだ?」
恵  「違うッ!」
渚  「俊祐。なぁ加々見。君は本当にその相模さんって人が好きなのか?」
恵  「うん」

俊祐、鼻で笑う

恵  「なんだよッ!?何が言いたいんだ!」
俊祐 「それはこっちの台詞だ。お前の気持ちってなんなんだよ」
恵  「俺はただ普通に人を好きになりたいだけだ。
    俺はもう春のことなんか好きじゃないし、あいつのことなんか今更なんだよ」
俊祐 「じゃあどうしてそんな顔して悩んでんだ?どうでもいいなら笑って済ませりゃいい話だろ」
恵  「だってあいつは姉ちゃんと……」

俊祐、ため息をつく

俊祐 「そんなことだろうと思った。お前は結局未だに姉ちゃんに囚われてるだけだろ。
    何が嘘を本当に変えただ。お前はまだ永久のこと好きなんだよ。
    姉ちゃんから逃げて、永久からも逃げて。
    そこで手差し出してきた相模さんに逃げ込んでるだけだ」
恵  「違う。俺はもうあいつのこと好きじゃないッ!」
俊祐 「だったらなんなんだよ!永久はこれから一生お前の姉ちゃん以外の人と
    一緒になっちゃいけないって言うのか!?」
恵  「そうじゃない…」

恵、涙を流す

渚  「……加々見。誰かを好きになることを、君が一番分かってるんじゃないのか?」
恵  「え…?」
渚  「君はずっと、永久のこと好きだったんじゃないか。
    小さい頃からずっと、君は恋をしていたんだ。
    会えて嬉しいとか、声を聞けるだけで嬉しいとか、そういうのを傍にいたから気づかなかっただけで、
    君はその喜びを知ってたはずだ」
恵  「……」
渚  「それは今感じているものと同じなのか?相模さんにも同じように思えているのか?
    君を見てるとただ素直になれていない様にしか見えないよ。
    恋に恋して自分を見失ってるんじゃないのか?」
恵  「違う…俺はただ……」
渚  「もう嘘を吐く必要なんかないんだ。お姉さんはもういないんだから」
恵  「いるよ…」
渚  「え…?」
恵  「姉ちゃんはずっといるんだよ。消えることなんかないんだ。この先一生。何があっても」

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・街(回想)

学校の帰り道、前を歩いている春を見つける恵

恵  「あっ、春!」

駆け寄る

春  「恵ちゃん。帰り?」
恵  「うん!春も?」
春  「うん。一緒に帰ろうか」
恵  「うん!」

恵、笑っている

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・実家(回想)

恵と春、床に座って絵を描いている
そこへ美紀が来る

美紀 「けーいちゃん。私もお絵かき見せて?」
恵  「えー、だーめ」
美紀 「どうしてー?」
恵  「俺の描いてる姿は見せられないから」
美紀 「もーう。いいじゃない」

剥れる美紀

恵  「また今度ね」

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・俊祐宅

恵  「会える喜びも、嫉妬することも知ってる。
    俺は春が好きだったよ。でももう本当に今更なんだ。
    姉ちゃんが春の中からいなくなることなんか絶対にないんだから。
    あいつが俺のこと好きだって言っても、それは絶対に変わらないんだ」
俊祐 「よく分かってんじゃねぇか」
恵  「分かってるよ。分かってるからこそ今更だって言ってんだ」
俊祐 「言ってろよ」

俊祐、呆れて煙草を消す

恵  「逃げてるって言われようが、俺はもう春の元に行くつもりはない…」
渚  「加々見……」

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・暁宅

窓辺に座って外を見ている恵
雨が降っている

暁  「指輪のこと、そんなに気にしないでいいんだよ?」

暁、コーヒーを持ってくる
恵に渡す

恵  「……うん」
暁  「それにしても君が料理好きだとは思わなかったな」
恵  「そう?」
暁  「今度僕にも何か作ってよ」
恵  「うん。いいよ」

恵、カップを持っているだけで口をつけない

暁  「……」

暁、窓辺にカップを置くと恵の顎を引いてキスをする

恵  「…んっ……」
暁  「指輪のことだけじゃないみたいだね」
恵  「……」
暁  「悩みがあるんなら聞くっていっただろ?それとも僕には言えないこと?」

恵、首を振る

恵  「ちーとの約束破っちゃったんだ」
暁  「約束?」
恵  「うん。一緒にご飯食べようっていっつも言ってくれてたのに、食べるって言って結局食べなかった」
暁  「また次の機会に食べればいいじゃないか」
恵  「ううん。もう無理なんだ。きっとちーは俺のこと嫌いになったと思うから」
暁  「喧嘩でもしたのか?」
恵  「…狸と猫かで……」
暁  「狸と猫?」
恵  「……」

恵、外を見ている

暁  「恵──」

恵、暁の言葉を遮るように暁の手を引きキスをする

恵  「ねぇ、暁さん。抱いて?」
暁  「恵……」
恵  「お願い…」

暁を見つめる恵
外は雨が降っている

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・寝室

ベッドの上で裸で座っている恵
暁、部屋に入ってくると電気を消す
外の明かりが窓の雫を部屋の中に映す
暁、ベッドに上がると恵にキスをする

恵  「…っ…ん…」

キスをしながら押し倒す
首筋にキスをし、だんだんと下へ向かう暁

恵  「っ……ぁ…」

恵、快感に表情を歪ませながら天井を見ている

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・街(回想)

春  「ずっとずっと僕が傍にいるよ。
    だから恵ちゃん寂しくないよ」

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・バー(回想)

春  「そっか」

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・春実家(回想)

春  「左手は結婚するときね」
    
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・春宅(回想)

春  「恵ちゃん紅茶でいいー?」

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・実家玄関前(回想)

春  「まだ持っててくれたんだ」

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・路地(回想)

春  「約束したでしょう。僕が君の傍にずっといるって。一人になんかさせないって」

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・手術室前(回想)

春  「愛してるよ」

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・春宅(回想)

春  「どうして起こすの?」

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・キッチン(回想)

春  「それ……」

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・リビング(回想)

春  「他の人のものになんかならないで」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・寝室

春  『君が好きだ』

暁  「……恵」

暁、恵の方を見る

暁  「そんなに約束守れなかったことが悲しい?」

恵、泣いている

恵  「っ…ぅっ……」

暁、恵の涙を拭いてやる

暁  「焦ることないんだ」
恵  「ごめんなさい……」
暁  「謝らないでくれ」
恵  「ごめんなさい…」

暁、恵にキスをする

暁  「君が僕のことをまだ好きでいてくれると信じているよ」

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・街

夜の道を一人、傘を差しながら歩いている恵

俊祐 『何が嘘を本当に変えただ。お前はまだ永久のこと好きなんだよ』
渚  『君はずっと、永久のこと好きだったんじゃないか』

恵  「……」

恵M 「結局俺はどうしたいんだ。暁さんとなにも出来ずに、あの人傷つけて。
    でも春のところになんか絶対行けない。
    それなのに、どうして浮かんでくるのは春のことばっかりなんだ」

家の前に誰かがいる

恵  「……」

雨に濡れている春
恵に気がつく

春  「恵ちゃん…」
恵  「何してんだよ……」

春、何も言わずに恵に駆け寄り抱きしめる

恵  「っ……」
春  「どこ行ってたの」
恵  「……どこだっていいだろ…」
春  「恵ちゃん愛してる」
恵  「っ──」
春  「君が誰かのものになるだなんて耐えられない。
    僕を嫌いだって言っても君を手放すことなんかできないんだ」

恵、涙を流す

春  「僕を嫌いでもいい。お願いだから誰かのものになんかならないで」
恵  「……」
春  「僕の傍にいて」
恵  「なんで…なんでそんな勝手なこと言えんだよ…」
春  「君が好きだから」
恵  「俺だってあんたのこと好きだった。でもあんたが俺のこと手放したんじゃねぇか。
    俺の傍から離れて、姉ちゃんのとこ行ったのは誰だよ!」
春  「僕だ…」
恵  「なんで…最初から俺のこと好きでいてくれなかったんだ……」
春  「ごめん…」
恵  「春…」

恵、春から離れて頬に触れる
春、恵にキスをする

恵  「…んっ……っ…」

春、雨に濡れた恵の髪を撫でると首筋にあるキスマークに気がつく

春  「……」

春、突然恵の手を取ると何も言わずに手を引いていく

恵  「春…?」

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・自宅

二人とも濡れたまま家に入る
相変わらず何も言わないまま手を引いていく春
ベッドに恵を突き飛ばす

恵  「っ!」

春、恵に深くキスをする

恵  「っ…ん……は、る……ん」

恵、それを受け入れて首に手を回す
春、恵の服を捲り上げ体中にキスを落とす

恵  「んっ……」

快感に顔を背ける
目に入る棚の上のピルケース

恵  「っ!」

恵、咄嗟に春を見ると春と目が合う

恵  「嫌だ……」
春  「恵ちゃん…?」
恵  「嫌だッ!」

恵、春を突き飛ばすと家を飛び出す

春  「恵ちゃんッ!」

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・街

雨の降る中を走っていく恵

恵M 「俺は姉ちゃんじゃない──」

しばらくするとゆっくり立ち止まる

恵M 「消えることなんかないんだ」

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・繁華街

雨上がりの街
俊祐と渚が歩いている

渚  「いなくなるなんか絶対にない、か……」
俊祐 「え?」
渚  「加々見が言ってたことだよ」
俊祐 「あぁ…」
渚  「どうしてあの時あんなに突き放すような言い方したんだ?
    この間は応援するって言ってたのに」
俊祐 「幸せならな」
渚  「だったら…」
俊祐 「だってあいつ幸せな顔してねぇじゃん。
    嘘でも好きな人出来たって言って、それでそのまま幸せなら何にも言わなかったよ。
    でももう顔に出てんじゃん。永久のこと好きだって」
渚  「……」
俊祐 「あいつ素直じゃねぇし、自分が一番じゃなきゃすぐ拗ねるし。
    強がってるけど傷つくことから逃げ回ってる馬鹿なんだよ。昔から。
    今までどうでもいい奴らとやりまくってたこともそう。永久への当て付けだろ?」
渚  「……」
俊祐 「でも今回のはもうどうしようもない。死んだ人を怖がって逃げて。
    俺があいつに何言ったって、もうはいそうですかじゃすまないんだよ。
    あいつが自分でなんとかしないと。俺に逃げてきたって今回はもう何も言えない。助けてやれないんだ」
渚  「…君は加々見のこと本当によく分かってるんだな」

俊祐、渚を見て少し笑い、鼻でため息をつく

俊祐 「なに、やきもちでも妬いてくれてんの?」
渚  「え?あ、いや…」
俊祐 「ふっ、俺とあいつはただの親友だ。もう昔から」
渚  「……」
俊祐 「馬鹿なのは永久もそうなんだよ。あいつ昔──」

俊祐、突き当たりの路地を見ながら言葉を止める

渚  「俊祐?」

俊祐、走っていく

俊祐 「恵!」

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・路地

路地の隅に壁に寄りかかって座り込んでいる恵がいる
俊祐、恵を抱きかかえる

俊祐 「恵!しっかりしろ!何してんだこんなとこで!」

恵、ゆっくりと目を開けると俊祐を見て微笑む

恵  「ははっ、春かと思った」
俊祐 「……」
渚  「加々見」
恵  「あー、先生もいる…。また邪魔したな。ごめんな」

恵、相変わらず笑っている

俊祐 「アホか。お前凄い熱あるぞ。こんなびしょびしょで。とりあえず家に──」

恵、俊祐の服を掴む

恵  「嫌だ…。帰りたくない……」

恵、涙を流す

渚  「何かあったのか?」
恵  「帰れない…。春がいるから……」

恵、気を失う

渚  「加々見!?」
俊祐 「何があったかわかんねぇけど、とりあえず俺んち連れて行こう。先生鞄持って」
渚  「あぁ。分かった」

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・俊祐宅

寝室のベッドに寝ている恵

渚  「病院に連れて行かないで大丈夫かな……」
俊祐 「とりあえず様子見よう」
渚  「それにしてもどうしてあんな…。永久と何が──」
恵  「…ん……」

恵、目を覚ます

渚  「加々見」
恵  「先生……。ここどこ…?」
渚  「俊祐の家だよ」
恵  「そっか……よかった…」

苦しげに微笑む恵
俊祐、ベッドに座る

俊祐 「恵。何があったんだ。永久と喧嘩でもしたのか?」

恵、目に涙を一杯溜めて首を振る

俊祐 「……」

俊祐、恵の髪を撫でる

恵  「あいつ…きっと俺が帰ってくるの待ってるから……」

恵、両腕で顔を隠して泣いている

恵  「もう俺…誰のとこにもいけないよ……」
俊祐 「…永久のことが好きか?」
恵  「うん…」
俊祐 「…なぁ、恵」

俊祐、恵の腕を取って目を見る

俊祐 「そろそろ素直になれよ。思ってること全部話してみろ。
    自分のことだけ考えればいい。お前もう十分我慢したよ。
    姉ちゃんのことも、全部あいつに話せ。それでちゃんと逃げずにあいつの話も聞いてみろ」
恵  「……」
俊祐 「お前の言うとおり、姉ちゃんがいなくなることなんかないよ。
    お前らが生きてる限りずっとどこかにいる。でもそれは仕方のないことだろ?
    恵も姉ちゃんのこと好きだったし、永久も好きだったんだ。
    そこから逃げることなんか絶対に出来ないんだ。乗り越えるしかねぇんだよ。最後にちょっと頑張ってみろ」
恵  「俊祐……」
俊祐 「お前にだったら出来るよ。俺が保証してやる。言っただろ?お前の我侭くらいいくらでも聞いてやるって。
    なんかあったら俺んとこ来い。お前を一人になんかさせねぇよ」
恵  「…ぅっ……な、んで……お前そんな……」

俊祐、笑う

俊祐 「親友だろ?」
恵  「ばーか……」

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・リビング

渚  「……」

渚、一人テーブルの前に立っている
俊祐が寝室から出てきて渚を振り向かせキスをする

渚  「しゅん…すけ…?」

抱きしめる

俊祐 「勘違いすんな。俺が好きなのはあんただけだ」
渚  「……」

渚、涙を流す

俊祐 「泣くなよ」
渚  「でも…好きだったんだろ…?」
俊祐 「昔の話だ。あいつが好きになるのは今も昔も永久だけなんだよ」
渚  「……俊祐」

渚、俊祐を見上げる

渚  「愛してる。俺のことだけ見ててくれ。やきもちなんか妬かないから」
俊祐 「寂しいこと言うなよ。愛してるよ」

キスをする

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第三章

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・リビング

渚  「か、加々見って料理するんだ……」

テーブルに広げられた料理を見て驚く渚

恵M 「あれから一週間。俺は熱が下がらなくてずっと俊祐の家に世話になっていた。
    でももう今ではすっかり元気になった」

恵  「俺の料理は世界一なんだよ?これだけは誰にも負けない自信がある!」
俊祐 「どうでもいいから早く食おうぜ。腹減った」

いいながら席につく俊祐

恵  「食え食え。ホラ、先生も座って」
渚  「あぁ」

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・リビング

食事をしている三人

渚  「ホントに美味しいね。凄いな…」
恵  「わーいありがとっつかさ、涼子は〜?この一週間一度も見なかったけど」
俊祐 「だーいぶ前に出てった」
恵  「今度は何?」
俊祐 「なんだったかな…。スペインのフラメンコダンサーだったっけ…?」
恵  「とうとう国外かよ」
俊祐 「いや、都内在住」
恵  「ハハハッ」

恵、箸を止める

恵  「あのさ、今日帰るわ」
俊祐 「そりゃこれだけ元気なんだ、帰ってもらわないと困る」

俊祐、笑う

恵  「ははっ、ほんとだよ。これだけ元気だったら大丈夫だよな」

恵、少し俯く

俊祐 「大丈夫だよ。お前なら」

俊祐、食べながら話す

渚  「頑張って」

渚、微笑む

恵  「うん」

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・街

歩きながら携帯を開く恵
着信履歴には春の名前が連なっている

恵  「……」

通話ボタンを押そうとすると電話がかかってくる

恵  「うわっ!」

自宅と表示されている

恵  「母さん?」

出る

恵  「もしもし?」
母  『もしもし?あなた今どこにいるの?』
恵  「あー、俊祐んちにいた…」
母  『もう。また急にどこか行っちゃうんだから。春くんも探してたわよ?』
恵  「うん…。ごめん」
母  『ちゃんと生きてるならいいの』
恵  「生きてるよ」

笑う

母  『今日ね、皆でご飯食べましょうって言ってるんだけど、恵も来れる?』
恵  「皆って春も?」
母  『当たり前でしょう』
恵  「そっか。うん。行くよ」
母  『あなた、春くんが来なかったら来ないつもりだったの?』
恵  「いや、そういうわけじゃないけど」
母  『嘘おっしゃい。恵はもう生まれたときから春くんばーっかりに懐いてたもの』
恵  「そーか?」
母  『そうです。まぁいいわ。何か甘いものでも買ってきて頂戴』
恵  「あー、分かったよ」

笑う恵

恵  「うん。うん。分かった。じゃ後で」

電話を切ると微笑んで歩いていく恵

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・暁宅

暁  「上がって」

暁、恵の顔を見て微笑む

恵  「暁さん…。ごめんなさい」
暁  「もう家にも上がってもらえないのかな」

暁、悲しげに微笑む
その表情を見て首を振る恵

暁  「だったら座って話そう」
恵  「うん…」

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・リビング

ソファに座っている恵と暁

暁  「君の顔見てたら言われなくても分かってしまうな」

悲しげに微笑む暁

恵  「暁さんのこと、ホントに好きだったよ」
暁  「それは今でも?」
恵  「うん。春がいなかったらあなたとずっと一緒にいたと思う」
暁  「結局、僕は敵わなかったわけだ」
恵  「…あの時暁さん、言ったじゃん。嘘が本当に嘘かもしれないって。
    あの意味、今だったら分かる気がする。俺には嘘を本当に変えることなんか出来なかったんだ。
    自分自身を騙そうとして必死だった。結局出来なかったんだけどね」

悲しげに微笑む

恵  「こんな馬鹿な奴に付き合ってくれてありがとう」
暁  「僕は遊びなんかじゃなかったんだよね?」

暁、恵を抱き寄せる
腕を回す恵

恵  「うん。俺、ほんとにあなたが好きだったよ」
暁  「だった…ね。ふふっ、今の君が本当の君なんだな」

暁、離れる

暁  「ねぇ、今写真撮らせてくれないか?」
恵  「あー…」
暁  「急ぎの用事がある?」
恵  「うん。ちゃんと伝えなきゃいけない奴がいるから」

微笑む恵

暁  「そうか。なら一枚だけ」

暁、机の上に置いてあったポラロイドカメラを取る

暁  「君の本質がやっと掴めたよ」

シャッターを切る
暁、もう一度恵を抱きしめる

暁  「これからは自分に正直に生きるんだよ。幸せになって」
恵  「うん。ありがとう」
暁  「君は本当に綺麗だな」

笑い合う二人

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・実家

庭で遊んでいる千尋と哲平(てっぺい)
千尋、ハーモニカでかえるの歌を吹いている

千尋 「あー、たぬきさんだ」

塀の上の猫を見る

哲平 「ちー、あれは猫」
千尋 「……ねぇ、てっちゃん」

千尋、哲平の服を掴む

哲平 「んー?」
千尋 「今日恵ちゃんも来るの?」
哲平 「恵ちゃん?さぁ分かんない。なんで?」
千尋 「僕ね、恵ちゃんに謝らなきゃいけないの」

千尋、俯く

哲平 「恵ちゃんと喧嘩でもしたのか?」
千尋 「ううん。僕がね、怒らせちゃったの」
哲平 「そっか。あ、でもこの間父さんが恵ちゃんまたいなくなったって言ってたなー」
千尋 「え…?」
哲平 「でもきっと来るよ。だって恵ちゃんちーがいる時は絶対来るし。な?」
千尋 「うん…」

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・庭

戸口に座っている千尋、その隣に哲平が座っている

千尋 「……」
哲平 「俺トイレ」

哲平、トイレへ
千尋、哲平の後ろ姿を見送ると立ち上がる

千尋 「……」

千尋、走って家を出て行く

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・街

夕暮れ時
ケーキの箱を持って歩いている恵

恵M 「春になんて話せばいいんだろう。今どんな顔してるのかも分からない。
    会ってまずはごめんなさいか?きっとあいつのことだから、自分が悪いって言うんだろうな」

実家が見えてくる

恵M 「俺の正直な気持ちを言うなら、好きだとしか言えないけど──」

実家の門に手を掛ける
玄関に哲平がいる

哲平 「恵ちゃん!」

駆け寄ってくる哲平

恵  「哲平…どうしたんだよ?なんかあったのか?」
哲平 「ちーがいなくなった!」

哲平、目に涙を溜めて言う

恵  「え?どういうこと?」

恵、哲平の目線にしゃがむ
哲平、涙を擦りながら話す

哲平 「俺がトイレから帰ってきたらどこにもいなくて…皆探しに行ってる…ごめんなさい。俺のせいだ…」
恵  「心配すんな。俺も探しに行くから。お前一人か?」
哲平 「ううん。母さんが中に」
恵  「あとは皆出て行ってるんだな?」
哲平 「うん」
恵  「ちー何か言ってなかった?」
哲平 「わかんない…普通に遊んでて…」
恵  「そうか。分かった。俺行ってくるから、コレ冷蔵庫に入れとけ」

恵、哲平の頭を撫でてケーキを渡すと出て行こうとする

哲平 「恵ちゃん!」
恵  「なに?」
哲平 「あの、ちーが恵ちゃんに謝らなきゃいけないって言ってた…」
恵  「え?」
哲平 「僕が怒らせちゃったからって…」
恵  「そうか!わかった!お前中入ってろ!」

恵、走っていく

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・街

走っている恵

恵M 「あの馬鹿。なんで自分のせいだと思ってんだ…!」

千尋 『いないよ。そんなの違うもん。恵ちゃんはパパのこと好きなんだもん』

恵M 「あいつはちゃんと分かってたのに!全部俺のせいだ!」

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・街

恵  「ちー!どこだー!?」

住宅街を走っている恵

恵  「ちー!」

夕日が沈みかけている

稔  「恵!」

前から自転車に乗った稔(みのる)が来る

恵  「兄貴!」
稔  「お前も探してたのか!」
恵  「そっちはいない?」
稔  「あぁ、幼稚園にも行ってみたけどいなかった」
恵  「あの歳の歩きでそう遠くには行けないだろ」
稔  「もう日も沈むし、早くしないと」

哲平 『ちーが恵ちゃんに謝らなきゃいけないって言ってた…』

恵  「!」
稔  「行きそうなとこ分かったのか!?」
恵  「俺を探してるんだって言ってた…俺の家…」
稔  「電車に乗らなきゃいけないだろ」
恵  「あいつだったら歩きでもいくよ!俺行ってみる!」

恵、走っていく

稔  「家の方に春が行ってる!連絡しろ!」
恵  「わかった!」

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・街

夕日が沈んでいく
走っている恵

恵M 「お願いだから無事でいてくれ…!」

恵  「ちー!いるなら返事しろ!」

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・公園

夜の公園
遊具の階段に千尋が泣きながら座っている
ハーモニカを握り締めている

千尋 「……っう……ぱぱ…」

泣いていると目の前を猫が通る

千尋 「たぬきさんだ……ねぇ、たぬきさん。恵ちゃんのお家知らない…?」

猫、鳴く

千尋 「僕ね、恵ちゃんにごめんなさいしないといけないの……そうじゃないとパパが泣いちゃうからね。
    でもね、恵ちゃんのお家が分からないの……」

猫去っていく

千尋 「あっ……たぬきさん…待ってよー…恵ちゃんのお家教えて…?」

千尋、立ち上がって猫の行く方を見る
真っ暗な公園
誰もいない

千尋 「パパ……ここどこ…?怖いよ……」

また泣き出す千尋
烏が鳴く
驚いてまた遊具の階段に座る
ハーモニカを見る

千尋 「大丈夫。寂しくなったらハーモニカを吹くんだ……そしたら寂しくなくなるんだ…」

千尋、鼻水をすすってハーモニカを吹く
たどたどしいきらきら星

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・街

夜の街を走っている恵

恵  「ちー!どこだよ!返事しろ!」

立ち止まって息を整える

恵  「クソッ…どこいったんだ……」

道の先を見る
微かにきらきら星が聞こえてくる

恵  「ハーモニカ……ちー…?!」

走っていく恵

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・公園前

恵  「ちー!どこだ!?」

ハーモニカの音が途切れる
公園の中を見る恵

千尋 「恵ちゃん……?」

千尋、遊具から下りて入り口の方を見る

恵  「ちー!」

恵、走って行く
千尋も駆け寄る

千尋 「恵ちゃん!」

抱きとめる

恵  「お前っ…なんでこんなとこっ…」

泣いている恵

千尋 「ごめんなさい……っ…ごめんなさい」
恵  「謝らなくていい。良かった…無事で…」
千尋 「恵ちゃん…僕恵ちゃんにごめんなさいしなきゃいけないの」
恵  「いいよ。お前は悪くない」
千尋 「パパは悪くないの。だからパパを嫌いにならないで…」
恵  「うん。俺春が好きだよ。俺の好きな人は春しかいないよ」
千尋 「ほんと…?」
恵  「うん。俺もちーに謝らなきゃな。あの時ちーはちゃんと教えてくれたのに。ごめんな。
    俺、春のこと愛してるよ」
千尋 「僕に言うんじゃないよ。パパに言わなきゃ」

千尋、笑っている

恵  「うん」

公園の入り口に立っている春

千尋 「恵ちゃん」
恵  「ん?」

千尋の指差す方を見る

恵  「春…」

春、無言で歩いてくる

恵  「あの──」
春  「どれだけ心配したか……」

春、泣いている

春  「二人共いなくなったら…僕一人でどうすればいいんだ……」

千尋、駆け寄り春に抱きつく

千尋 「パパ泣かないで。ごめんなさい。僕、恵ちゃん探しに行ってたの」
春  「っ…ぅぅ…」
千尋 「でもね、恵ちゃんパパのこと好きだって。ねぇ?」

恵の方を見る

恵  「……うん…」
春  「もういなくなったりしないで…」
恵  「…うん……ごめんなさい…」

恵、涙を流す
春、千尋を抱き上げると恵の方へ行って抱きしめる

春  「二人とも無事でよかった」

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・街

千尋、春に抱かれて眠っている
二人、手を繋いで歩いている

恵  「俺、春が好きだよ」
春  「……うん」
恵  「あんたしか好きになれない」
春  「うん」
恵  「多分もう、死んでも好きなんだと思う」

春、ため息を吐く

恵  「なっ!人が真剣に…!」
春  「恵ちゃん、この状態でそんなこと言わないでよ…」
恵  「なんで」
春  「キスできない」
恵  「……」

恵、立ち止まって春の頭を持つ

恵  「俺がすればいいんだろ?」

恵、春にキスをする
春、微笑む

春  「愛してるよ」
恵  「俺も」

もう一度キスをする
笑い合う二人

千尋 「恵ちゃん僕はー?」
恵  「うわっ、起きてたの?」
千尋 「ふふっ、僕にもキスして?」

恵、鼻で笑うとキスをする

恵  「ほら、帰ろう。皆待ってる」

また手を繋いで歩き出す
笑いながら帰る三人

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・実家前

皆家の前で待っている
三人の姿を見て安心して泣き出す母
笑っている父、胸をなでおろす稔
哲平、母親と手を繋いでいたが離れて千尋に駆け寄る

千尋 「てっちゃん!」

千尋、哲平に抱きつく

哲平 「どこ行ってたんだよ!?」

哲平、泣いている

千尋 「ごめんね」
哲平 「心配したんだからな…」
千尋 「もうどこにもいかないよ。だってホラ、パパと恵ちゃん仲直りしたから」

笑う春と恵
皆で家の中に入っていく

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・客間

ベッドで手を繋いで眠っている千尋と哲平

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・恵の部屋

ベッドに二人座っているが不自然に間が開いている

春  「恵ちゃん、遠い…」
恵  「い、いいんだ!これくらいで!あんたには言いたいことが山ほど!」

春、微笑む

春  「なに?」
恵  「……」
春  「?」
恵  「……」

恵M 「何から話せばいいんだ……」

春  「恵ちゃん?」
恵  「……俺、一番じゃないと嫌…」

恵M 「言いたいことはこれでいいのか…?!」

春  「一番だよ」
恵  「そうじゃなくて…」
春  「美紀のこと?」

恵、俯く

恵  「だって春にとって姉ちゃんは一番だろ…?それはいつまでたっても変わらない。
    俺、姉ちゃんの代わりは嫌だ…」
春  「…こんなこと弟の君に言うのはどうかと思うんだけど」
恵  「え…?」
春  「僕にとっての一番は昔から君しかいなかったんだよ」

恵、春を見る

春  「僕は美紀を君の代わりにしたんだ…」

俯く春

恵  「どういう…」
春  「怒ってくれても構わない。ううん、きっと君は怒ると思う」

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・春実家(回想)

春M 「僕はもうずっと君のことが好きだった」

中三の恵と高一の春
春の部屋でくつろいでいる恵
ベッドに寝そべっている
床に座っている春

恵  「なー、高校楽しいー?」
春  「え?うん。楽しいよ」
恵  「俺さー、男子校行こうかと思ってんだよねー」
春  「えぇ?同じとこ受けるんじゃなかったの?」
恵  「うん。そう思ってたんだけどさー、春んとこ共学じゃん?」
春  「そうだけど…どうして?」
恵  「やー、俺本気で女に興味無いみたい」
春  「えっ!?」

恵、寝返りを打つ

恵  「そう考えたらやっぱ男子校のが楽しいかなーって」

恵の首筋にキスマークを見つける春

春  「恵ちゃん…それ…」
恵  「え?なに?」
春  「キスマーク…?」
恵  「ん?あぁ、付いてた?ふふっ、俺やっちゃった」

ショックを受ける春

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・恵の部屋

へこんでいる春
頭を抱える恵

春  「それから恵ちゃんは高校生になったら、見るたび見るたび違う男の子連れて歩いてて…」
恵  「〜〜〜〜っ」
春  「僕は恵ちゃんも僕のこと好きなんだと思ってたのに、あぁ違うんだなってその頃から思い始めてて」
恵  「当て付けだってことくらい分かってくれ……」
春  「本気で好きだったんだよ?」
恵  「ぅっ…」
春  「でも嫌いになんかなれなかった…」
恵  「……」

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・春実家前(回想)

玄関を出ると美紀がいる

春M 「美紀が大学入ってすぐのころ。好きだって言われたんだ」

美紀 「あのね、春くん。私、春くんのこと好き」
春  「え……」

春M 「君にそっくりな顔で、そう言われて、今考えたら僕も君への当て付けだったんだろうね」

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・恵の部屋

恵  「最低……俺の姉ちゃん…」
春  「はぁ……。その後恵ちゃんは前よりも増して男の子をとっかえひっかえ。
    僕三人で部屋にいるのも見たことあるなぁ……」

悲しい顔をしている春
頭を抱える恵

恵  「〜〜〜〜っ」
春  「でもその後は本気だったよ。ほんとに美紀のこと愛してた」
恵  「……」
春  「君の代わりなんかじゃなくね」
恵  「……そう」
春  「でも一度美紀に泣かれたことがあった」
恵  「え…?」
春  「僕には恵ちゃんしか見えてないんだって」

美紀 『春くんの右手は恵ちゃんのことずっと捕まえてたから。
    それは今も変わらないの。春くんが落ち込んでしまう時は恵ちゃんが原因でしかなかったんだよ』
    
恵  「……」
春  「でもそれは違うんだって言った。僕はただ執着で君から離れられないんだと思ってたから。
    好きとか、そういうんじゃもう無くなってたと思ってたんだ」
恵  「執着……」
春  「うん。でもね、ちーが生まれて、美紀が亡くなって、だんだん、昔の気持ちが沸いてくるんだ。
    君が帰って行く後姿が愛しく見えて、でもどうすればいいか分からなかった」
恵  「……」
春  「指輪を見たときはもう絶望的だったな。恵ちゃんが指輪なんかしてるの見たこと無かったし、
    本気なんだなって。嫉妬心で気が狂いそうだった」

恵、春を見る

春  「指輪。落としてたよ」

春、ポケットから指輪を出して恵に渡す

恵  「もう…」
春  「もっと早くに返すべきだったんだけど。僕のささやかな反抗」

笑う

恵  「馬鹿」
春  「ねぇ、あの雨が降ってた日、一度は僕を受け入れてくれたよね?それともあれは僕の勝手な思い違い?」

恵、首を振る

恵  「ううん。あのまますんなり行ってたかもしれない」
春  「だったら…」
恵  「ピルケース」
春  「え?」
恵  「ピルケースが目に入って、姉ちゃんのこと思い出したんだ。そしたら怖くなって……」
春  「そっか…」
恵  「俺知らないうちに春のこと好きになって、無意識のうちに当て付けなんか馬鹿なことしてて
    それで姉ちゃんと付き合うって聞いてもまだ好きだって認めなかった。
    そこで俺も好きだって言ってたら何か変わってたのかな……」
春  「きっと言わなかったよ。恵ちゃんは」
恵  「なんで」
春  「だって恵ちゃんは素直じゃないもん」
恵  「悪かったな…」
春  「でももういいよ」

春、恵を抱きしめる

春  「もう過去なんか振り返らない。もうすれ違うのは嫌だ」

恵、笑う

恵  「何年すれ違ってんだよ」
春  「君が生まれた時からだよ」

春、笑ってキスをする

春  「恵ちゃん。愛してる」
恵  「うん」

キスをする二人
ベッドに押し倒す春
服に手を滑り込ませる

恵  「待った待った」
春  「何」

春、ちょっと剥れる

恵  「俺ちゃんと話しろって俊祐に言われてんだよ。今のは春の話聞いただけじゃん」
春  「もういいよ。だいたい分かるから」
恵  「そんなじゃダメだって。俊祐に怒られる」
春  「恵ちゃんが素直じゃなくて、自分の気持ちちゃんと理解しようとしなくて、僕から逃げてたって話でしょ?」
恵  「……大体そうだけど…」
春  「だったらもういい」

胸にキスをする

恵  「っ…俊祐になんて言えばいいんだよ…」
春  「恵ちゃん、こういう時に他の男の名前ばっかり言う?」
恵  「…俊祐は友達だもん……」
春  「もう、恵ちゃんはホントに鈍いんだから…」
恵  「はぁ?どういう意味」
春  「いいから。僕のことだけ考えててよ」
恵  「親子そろって……んぁっ!」

春の頭を咄嗟に持つ

恵  「何今の!?」
春  「ふふっ、お仕置き」
恵  「っつーか、ちょっと待て。なんで春が上なわけ?」

起き上がる恵

春  「まだ喋るの?」
恵  「これは一番大事な話だろッ!」

春、ため息をつくとシャツを脱ぐ

恵  「は、春…?」

恵の顎を引く

春  「喋れなくしてあげる」

春、意地悪く笑うとキスをする

恵  「んっ……は、るっ……」

離れると恵の目を見ながら髪を撫でる
目が離せない恵

恵  「……」
春  「最初に僕に好きだって言ったのは君だったのに」
恵  「え……?」
春  「僕も素直に君のこと、抱きしめていればよかった」
恵  「……春…?」

春、優しく恵にキスをするとゆっくりとベッドに押し倒す
下から見る春に言葉を無くしている恵
体中にキスをする春

恵  「あ、あの…っ…」
春  「ん?」
恵  「どうすればいいか…分からなくなった……」

恵、固まっている

春  「恵ちゃんはこんなことなれてるんじゃなかったの?」

少し笑って言うと恵、腕で顔を隠す

恵  「だって…こういう気持ちでしたことないんだッ」
春  「ふふっ、どういう気持ち?」
恵  「ど、どういうってッ……その…」
春  「うん?」
恵  「……ほんとに好きな奴とするのは…初めてだから……」
春  「へぇ…」

春、恵の腕を剥がす
真っ赤になっている恵
キスをする

恵  「〜〜〜ッ」
春  「でも、僕の体なんか見慣れてるでしょー?」
恵  「そ、そうだけどッ!……なんか…いつもと違う……」
春  「それは僕が可愛い君に興奮してるからだよ」

照れを通り越して切ない顔をする恵

春  「君に触れたくてしかたなかった」
恵  「……っ」

恵、春を押しのける

春  「恵ちゃん…?」

驚く春

恵  「入れてもいいから、先にやらせろ……」

照れながら春のズボンに手をかけ、咥える恵

春  「恵ちゃん……」

恵の髪を撫でる

恵  「んっ……んぅ……気持ち…いい…?」
春  「うん……っ…もう恥ずかしくないの…?」
恵  「ばか……噛むぞ」

恵、目を逸らす

春  「いいよ…恵ちゃんにだったら何されても気持ちよくなるだけだから」
恵  「〜〜〜っ!ほんとに噛むぞッ!」

恵の照れている顔を見て微笑む春

春  「おいで」
恵  「え…?」
春  「僕もしてあげるよ」

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・恵の部屋

恵、春を咥えながら春の上に被さっている
春、恵を咥えながら指を入れている

恵  「あっ、やだ……んっ……それ…やめ…っ」
春  「んっ……んぅ……これ…?」
恵  「はぁっ!……なに…やぁっ……」
春  「恵ちゃん……あんまり声出すと下まで聞こえるよ…?」
恵  「うるさ…いっ……春の、口んなか…んぅっ……どうなってんだよっ……あぁっ」
春  「ふっ……ん……皆と同じだよ……」
恵  「う、そ…だ……ぁっ……」
春  「ん……はぁっ……恵ちゃん」

春、言いながら指で中を抉る

恵  「あぁっ…!」
春  「ここに誰も入ってないの?」
恵  「はいってな、いっ……てめぇだけだばーか!」

春、笑う

春  「そんなに可愛いこと言われるともっと良くしてあげたくなるな」
恵  「うるさいっ……入れるんならさっさと入れろっ……」

春、鼻で笑うと恵を上から退かせて寝かせると上に被さる

春  「もう我慢できないから入れてくださいじゃないの?」
恵  「〜〜〜〜ッ」
春  「ほんとに君は素直じゃないんだから」
恵  「嫌ならやめろよ…っ」

拗ねる
その顔を見て笑うと恵から離れる春

恵  「え……?」
春  「じゃあやめよっか」

恵、春の腕を掴む

恵  「や、やだっ……ほんとに我慢できないからもう入れて……」

春を見つめる恵
その顔を見てもう一度ベッドに押し倒す

春  「素直になるとこれだから…」
恵  「ごめんなさい…」
春  「こっちが我慢できなくなる」

キスをすると恵に触れる

恵  「んぅ……はる…さわんな…ぁっ……もう…っ」
春  「まだダメだよ」
恵  「はぁっ……や、なんで……っ…」
春  「一緒にイこうね」

春、恵の中に入る

恵  「んっ!……あぁっ…やだ…っ……手…やだぁっ」
春  「だめだよ…離したら恵ちゃん……先に出しちゃうでしょ」
恵  「だって……あぁっ…んっ…もう、むりっ……」
春  「だーめ」
恵  「はるっ…」

恵、春の頬に触れ見つめる

恵  「おねがいっ……お、れ…おかしくなっちゃうっ……」
春  「……君はホントに……」
恵  「なっ、に……ぅっ…んぁッ…」
春  「無意識なの?計算?」
恵  「わかん、なっ……やだっ……はる……あぁっ」
春  「もういいよ……ほら、イって」

手を離す

恵  「あぁっ……やっ…もう…んんっ……あぁっでる…
    やぁっ…ん…イくっ…んぁっ…あ、ぁ、…ぁっ、あぁっ────っ!」

春、恵にキスをする

恵  「んぅ……んっ…はぁっ…はぁ…はる……」
春  「んー?」
恵  「すき……はぁ……愛してる」

恵、キスをする

春  「うん。じゃあもうちょっと頑張ろうね」
恵  「やっ…もう……あぁっ……」

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・恵の部屋

ベッドで寝ている二人

恵  「なぁ、さっき言ってた俺が先に好きだって言ったって何?」
春  「覚えてないならいいよ…」
恵  「五年前の話じゃなくて?」
春  「君が素直だった時の話」
恵  「俺が…?いつだよ……」
春  「はははっ、自覚あるんだ?」
恵  「……そりゃあ…」
春  「僕も素直じゃなかったんだよね…だから今まですれ違ったままだった」
恵  「ふっ、多分春が素直に俺に好きだって言っても逃げ回ってたんじゃねぇ?」
春  「分かってるならどうにかしてよ」

笑う

恵  「うん」
春  「でも恵ちゃんは素直じゃないと恵ちゃんじゃなくなる気がする…」
恵  「どっちだよ」
春  「もう素直じゃなくても僕の傍にずっと居てくれればそれでいい」

恵、寝返りを打つ

恵  「んじゃずっとこの手離すなよ」

恵、春に被さると左手を右手に重ねる

春  「もう死んでも離さないよ」
恵  「うん。愛してるよ春」
春  「愛してる」

キスをする

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・自室(回想)

恵  「……あぁ。なに、報告でもしようと思ってきたのかよ」
春  「うーんと…うん、一応。その、大切にするから」

恵、春を見る
微笑んでいる春

恵  「……」
春  「…恵ちゃん……」

俯いている恵

春  「僕、帰るね……」

出て行こうとドアノブを掴む

恵  「嫌だッ……」

恵、春に抱きつく

春  「恵ちゃん…」
恵  「嫌だ…行かないで…」
春  「……」
恵  「俺、春が好きだ…」

恵M 「ふふっ、確かに俺はこんな素直なこと言えないだろうな」

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・恵の部屋

手を繋いで眠っている二人

恵M 「きっと初めて会ったときから好きだった。
    それに気がついたのは随分経ってからだったけど、ずっとずっと、春しか好きじゃなかった」

恵M 「寄り道ばっかりして、素直になれなくて、思ってもないこと言ったりなんかして。
    ここまで来るのに時間がかかった。
    でもいつだって春の手からは離れられなくて、見えないモノに掴まれていた気がする」

恵M 「それは春の手だったのか、それとも俺の素直じゃない気持ちだったのか──」

恵、目を開けて春を見つめる

恵M 「今なら素直に言えるよ」

恵、左手を握ると微笑む

恵  「愛してる」

恵、目を閉じる

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・恵実家(回想)

インターホンが鳴り、玄関を開ける四歳の恵
門の前に五歳の春がいる
走っていく恵

笑い合うと自然とどちらからとも無く手を繋ぐ二人
歩いていく

恵  「春」

恵、春を見つめる

春  「なーに?」
恵  「俺、春が好きだよ」

微笑む春

春  「うん。僕も恵ちゃん大好きだよ」

笑い合う二人








おわり





雰囲気ぶち壊しのお疲れ様おまけ