・イタリアの家前 門の前に立っている哲平(てっぺい) 永久(ながひさ)の表札を確認して中に入っていく 玄関前でインターホンを鳴らすが誰も出てこない 哲平 「……」 恵 『お願い。ちーに顔みせてやって』 哲平 「……」 二階の窓を見上げるが、人の気配がしない 哲平 「……」 急にハーモニカの音が聞こえてくる 哲平 「っ?」 音のする方を見ると庭のベンチに誰かが座っている 哲平 「ちー……?」 こちらを向いて微笑んでいる 哲平 (じゃない……) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・庭 ベンチに座っている男をぼーっと見つめていると またハーモニカを吹き出す 左手薬指の指輪に夕日が反射して一瞬目がくらむ 哲平 「あの……」 男 「ふふっ。てっちゃん、おいで」 哲平 「なんで…俺の名前…?」 男、微笑んでいる その笑顔につられてゆっくりと近づいていく 男 「ちーを迎えに来てくれたんでしょう?」 哲平 「え、あの…どうして?」 男 「ちーはね、今海にいるよ。君が来るのを待ってる」 微笑む男 哲平 「どうして知っているんですか…?あなたは…」 男 「君がちーを幸せにしてくれるって信じてるよ。僕が出来なかった分、 君があの子を大切にしてあげて」 哲平 「でも俺」 男 「ふふふっ、何を不安になっているのー?大丈夫、君ならできるよ」 男、哲平の手を取り微笑む 指輪を見て疑問を抱く 哲平 (この指輪……どこかで…) 男 「君はこの手をずっと繋いでいてあげてね」 哲平 「手……」 千尋 『その手がね、僕の知ってる手だった。 僕はその手を二つ知ってる。恵(けい)ちゃんと、パパの手。 その手は一生懸命に僕を守ろうとしている手。 それが同じだった』 哲平 「恵ちゃんと…パパの……っ──」 哲平、男の顔を見る 微笑んでいる男 哲平 「あなたは──」 男、立ち上がる 男 「さぁ、僕はもう行かなくちゃ。ちーは転びやすいから、早くしないと海に落ちちゃう」 笑いながら門を出て行こうとする 哲平 「待って!あなたはちーの──!」 男、振り返り微笑む 男 「恵ちゃんによろしくね。それと……」 哲平 「え……?」 男 「ありがとうって」 男、去っていく 哲平 「待って!待ってください!」 哲平、追いかけて門を出るが、 去っていった方向には誰もいない 哲平 「そんな……」 立ち尽くしていると、遠くからハーモニカの音が聞こえてくる それを聞いて微笑む哲平 哲平 「海か…」 走っていく ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・リビング 哲平、千尋(ちひろ)と二人でソファに座っている 哲平 「なぁ、ちー」 千尋 「ん?なぁに?」 哲平 「春(はる)さんってどんな人だった?」 千尋 「え?パパ?ふふっ、すっごく優しくてね、かっこよくて、 ハーモニカが上手くって、それで恵ちゃんが大好きなの」 笑いながら答える千尋 哲平 「そっか」 千尋 「どうしたのー?急に」 哲平 「ううん、なんか知りたいなって思って」 千尋 「そうだ!アルバム、見るー?」 哲平 「うん」 微笑むと、戸棚からアルバムを持ってくる千尋 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・リビング ソファに座って二人でアルバムを見ている 哲平M「写真の中で笑っている春さんが、庭で会った人なのか、 俺にはよくわからなかったけど、それでも 俺はあの人の言ったことを守ろうと思う」 ソファに置いてある手にそっと重ねる それに気づいて微笑む千尋 笑い合う二人 恵 「ただいまー!」 恵、大きな荷物を抱えて帰ってくる 千尋 「おかえりー」 恵 「あ、何、上手くいったんだな?」 恵、笑う 千尋 「ふふふっ」 恵 「やっぱお前は笑ってるのが一番いいよ」 千尋 「恵ちゃんのおかげだよ」 恵 「なーに言ってんだよ!さっ、荷物運ぶの手伝え哲平!」 哲平 「はいはい…何買ってきたんですかこんなに沢山…」 恵 「いろいろだよいろいろ!って…何、アルバム見てたの?」 恵、ソファに座って写真を見る 恵 「懐かしいー」 懐かしげに笑う恵 その手を見て、あの指輪を思い出す 哲平 「……」 恵の左手薬指にはめられている二つの指輪 写真の中で笑っている春を見て 微笑む哲平 恵 「何笑ってんだよ?あ、俺様のかっこよさにビックリしたんだろ?」 哲平 「はははっ」 恵 「?なんだよ気持ち悪ぃな…まぁ春には負けるけどなっ」 千尋 「ねぇ、この時さ…」 哲平 「え!?ほんとに!?」 恵 「違う!この時は!」 三人で笑い合っている 哲平M「あの人が離したくなかったこの手を、ずっと繋いでいよう」 おわり |