・グラウンド

恭太(きょうた)、グラウンドから四階の教室を見上げている
教室の窓から外をぼーっと眺めている清晴(きよはる)

恭太M「夕暮れ時、あたりが暗くなり始めるころ。
    決まって四階の空き教室から何かを見ている奴がいる。
    三上(みかみ)清晴。勉強出来て、あんまり喋ってるとこは見たこと無い。
    眼鏡かけてて、少し大人びた顔してる」

友達 「きょーた!行くぞ!」
恭太 「お、おう!待って!」

友達の元へ走っていく恭太

恭太M「あいつが男に犯られてるのを見たことがある。
    抵抗もせず、ただ揺らされてた」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・教室

教師 「──ということで、今日から短縮だが、これはテスト勉強のための短縮授業だからな。
    遊ぶためじゃないんだぞ。遊びにばっかり出ないように。
    すぐ帰って勉強することー。分かったかー?」
生徒全「はーい」
生徒A「起立。礼」
教師 「職員室はドアまでだからな。気をつけろよ。それじゃ、解散」

散らばっていく生徒達

友達 「きょーた!どうする?カラオケ行くって話あんだけど!」
恭太 「行く行く!行くに決まってんじゃん!」
友達 「よーっしゃ!決まり!」
恭太 「声が枯れるまで歌ってやんよー!」

笑いながら教室を出て行く

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・街

友達五人と街を歩いている恭太

恭太 「あ」
友達 「ん?」

鞄をまさぐる

恭太 「やっべ、俺数学の課題プリント忘れた…」
友達 「いいじゃん別に明日でも。期間テスト当日だべ?」
恭太 「数学だぞ!?俺マジで勉強しなきゃいけないんだって。ゴメン。先行ってて。取ってくるわ!」

来た道を戻る

友達 「早くなー!」
恭太 「おーう!」

走っていく恭太

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・職員室

恭太 「失礼しまーっす」
教師 「そこまで!」

入り口で止まる

恭太 「あっいけね、そうだった。せんせー、俺プリント忘れたんだ。鍵貸してー」
教師 「はぁ?しかたねぇなぁ」

鍵を持って近づいてくる教師

恭太 「さーんきゅ」
教師 「そうだ。ちょうどいいわ」
恭太 「なにー?俺急いでんだけど!」
教師 「ついでだ、ついで。四階の教室全部閉まってるか確認してきてくれ。
    んで誰か残ってたら帰れって言って鍵閉めてこい」
恭太 「えぇ!?四階って、俺行くの三階だよ!?」
教師 「いいからいいから!んじゃないと鍵かさねぇ」
恭太 「そんなぁ!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・階段〜四階廊下

階段を上がって四階の廊下を一人歩いてくる恭太

恭太 「……」

恭太M「四階の端っこ。あの空き教室に、あいつがいるかもしれない。
    あれを見たのもあの部屋で、他には誰もいないこの四階の教室から
    人の息遣いと、微かな水音。ただそれだけが響いていた」

順番に鍵を確かめる

恭太M「でもあいつを見るのは決まって夕方。
    空が真っ赤に染まる頃。
    あの時だってそうだった。
    だから今日はきっといない」

空き教室の前で止まる

恭太 「……」

静かにドアに手をかける
ドアが静かに開く
教室の窓際に座っている清晴

清晴 「ぁ……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・空き教室

お互い黙っていると、窓から風が入り込み
カーテンを揺らす
それに当たってプリントが落ちる

恭太 「あ、あの……」

恭太M「まさか、本当にいるとは思わなかった」

プリントを拾っている清晴

恭太 「ここ、閉めろって言われてて…その……」
清晴 「そうなの?いつもは学校閉まるまで開いてるんだけど」
恭太 「いや、なんかしんねぇけどさ。短縮だからじゃない?」
清晴 「短縮……あ、そうか。そしたら今日は皆もう帰ったのか…」

独り言のように呟く清晴

恭太 「閉めてもいいか…?」
清晴 「うん。ごめんね」

清晴、プリントを持ってこちらに来る

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・四階廊下

ドアに鍵をする恭太

清晴 「俺、鍵返しとくよ」
恭太 「え?あ、いや、いいよ。俺が頼まれたことだし…」
清晴 「あ、そうだよね。ごめん」
恭太 「別に謝らなくてもいいんだけどさ」
清晴 「そっか、ごめん。あ、じゃなくて…俺これ癖で……」
恭太 「はははっ、そうなの?」

歩き出す二人

清晴 「うん、なんか…はははっ」
恭太 「んじゃ俺、職員室行くから。じゃあな」
清晴 「うん……」

恭太、行こうとする

清晴 「あの!」
恭太 「ん?」

振り向く恭太

清晴 「あ、あの……」
恭太 「なに?」
清晴 「あのこと、皆に言わないでくれてありがとう」
恭太 「え…?」
清晴 「それと、ごめんね」
恭太 「……」
清晴 「それじゃあ。ばいばい」

清晴、走っていく

恭太M「このとき初めて知った。俺が見たこと知ってたこと。それと、
    あんな顔して笑うこと……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・教室

教室の窓からグラウンドで体育をしている風景を見ている恭太
その中に清晴を見つける

恭太M「それから何度もあいつを見た。
    四階のあの教室じゃなくて、いつもの日常風景の中。
    今まで見つけたことなかったところに、あいつはいた。
    いや、きっといたことに気がついていなかっただけだ」

グラウンドをランニングしている清晴

恭太M「あいつの髪は少し長くて、染めているのか茶色く見えた。
    細いフレームの眼鏡をかけて、華奢な体」

恭太 (体操服でかくないか…?女の子と一緒にいても違和感ねぇ……)

恭太M「あまり話しているとこは見なかったけど、
    それでも何人か友達はいるみたいだし。
    いじめられている風でもなかった」

恭太 (あ、結構足はえー……)

恭太M「あいつを見ているうちに思ったんだ。
    どうしてあんなことやられてたのかって」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・街

夜中、バイト帰りで自転車に乗っている恭太
前から歩いてくる人を見つけ、立ち止まる

清晴 「あ……」
恭太 「よう。偶然」

清晴、笑う

恭太 (あ、またあの時と同じ……)
清晴 「土屋くん、この辺の人だったの?」
恭太 「いや、バイト帰り。そこのコンビニ」
清晴 「そうなんだ。知らなかった」
恭太 「お前は?どっか行くのか?」
清晴 「ううん。帰るところ」
恭太 「そうか、どっち?」
清晴 「こっち」
恭太 「乗れよ。途中まで送ってく」
清晴 「え?ありがとう」

微笑む清晴

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・街

自転車の前に恭太、後ろに清晴が乗っている

恭太 「……」
清晴 「……」
恭太 「三上─」
清晴 「土屋く─」

同時に言う

恭太 「あ、いいよ。何?」
清晴 「う、ううん。土屋くんから先で」
恭太 「あーっと、恭太でいいよ。名字で呼ばれんのなんかしっくりこないから」
清晴 「え?あ、っと、じゃあ恭太くん」
恭太 「あー、うん。別にいいや」
清晴 「ふふっ、俺も清晴でいいよ」
恭太 「そう?じゃあ清晴」
清晴 「うん。ふふふっ」
恭太 「こんな時間まで何してたの?夜遊び?」
清晴 「うーん。そうかな?」

清晴、笑う

恭太 「そっか」

清晴の手を見ると真っ赤になっている
止まる

清晴 「?」
恭太 「これ、使えよ。寒いだろ」

自分のしている手袋を外そうとする恭太

清晴 「え?でも」
恭太 「大丈夫」

恭太、笑うと手袋を外す
すると下に軍手が出てくる

恭太 「二枚重ねにしてんの。寒いからさ。ん」

手袋を渡す恭太

清晴 「ありがとう。ごめんね」
恭太 「あ、また謝った。ホントに癖なんだな。いいっつってんのに」
清晴 「あ、ほんとだ。はははっ」

二人、笑う
走り出す

清晴 「あー、月が出てる。満月だー」

空を見上げる二人

恭太 「お、ほんとだ。今日は空気澄んでんなぁ。雲がすっげぇ綺麗」
清晴 「空は高いのに、雲は下のほうにあるんだよね。昼間はもっと上にあるのに」
恭太 「うん。あ、なぁ、月ってさ、地球から出来たんだってさ」
清晴 「あぁ、ジャイアント・インパクト…だっけ?」
恭太 「そう!それ!俺知らなかったんだよなぁ。こないだ聞いてびっくりした。
    そうなると、月と地球は兄弟…いや、双子か…。ん?分身?」
清晴 「はははっ、でも不思議だよね」
恭太 「そう。地球ってさ、太陽が沈むと真っ暗になるだろ?
    街の明かりとかも消えちゃったら何にも見えなくなる。
    でも、少し目が慣れてくると月がすっごく明るく照らしてくれるんだって。
    こうして歩いてるとさ、月なんかちょっと光ってるだけに見えるけど
    電気とかなくなったら、すっげぇ頼りになんだろうなぁ。
    しかもその方が綺麗だろうなー」
清晴 「……」
恭太 「あ、いや!ご、ごめん!なんか気持ち悪かったよな!ハハハ…」
清晴 「え?ううん!違うんだ!恭太くんってそういう話する人じゃないと思ってたから…」
恭太 「変、だよな……」
清晴 「そうじゃなくって、嬉しいと思ったんだ!」
恭太 「嬉しい……?」
清晴 「うん!俺も同じこと考えてた」
恭太 「……ほんとに?」
清晴 「うん」

清晴、微笑む

恭太 「そっか……」
清晴 「真っ暗闇の森の中で迷子になった人の話を聞いたことがあるんだ。
    その人は孤独と恐怖と戦いながら、ただ空を見上げて歩いていたって。
    暗闇の中、その月だけが自分を見守っていてくれる味方だって思ったって。
    月だけが輝く空を見ながら出口を探したんだって言ってた」
恭太 「へぇ」
清晴 「俺も……時々そういうときがあるよ…」
恭太 「え?」
清晴 「ふっと考えるんだ。俺のこと味方してくれる人なんか一人もいなくって、
    一人ぼっちで生きている気がするときがある」
恭太 「……」
清晴 「俺、男の人が好きなんだ……。そういうの、理解してくれる人って
    中々いなくって。親にだって言えないし。
    でもそんなときにね、空を見上げたら月があるの。
    それであの話を思い出す。
    そしたら少し安心するんだよね。なんでかわかんないけど」
恭太 「そっか……」
清晴 「うん」
恭太 「あの…さ」
清晴 「ん?」
恭太 「言いたくなかったら答えなくてもいいんだけど、あいつと清晴は付き合ってんのか?」
清晴 「……」

清晴、無言で少し俯く

清晴 「ううん…」
恭太 「じゃあ──」
清晴 「俺、あいつのこと好きだったんだよ」
恭太 「え?」
清晴 「去年の夏。夏休みが始まる前だったかな、あいつに呼び出されたんだ。
    俺それだけで嬉しくて、馬鹿みたいにちょっと期待してた。
    ホント馬鹿だったんだけど。
    そしたら──」

生徒B『お前さ、俺のこと好きなの?』

清晴 「言うつもりなんか無かったんだよ。だって相手は普通の奴だったし、
    きっと気持ち悪がられるだけだって分かってたから。
    でもそんなこと聞かれて、もしかしたらって思っちゃったんだ」

清晴 『う、ん……』
生徒B『やっぱり!?おーい、マジかよ…やたら俺のこと見てると思ってたけどさー、
    お前がマジでそんなだと思ってなかったわ』
清晴 『え……?』
生徒B『お前ホモなの?っつーか、俺のこと好きってことはそうだよなぁ?』
清晴 『……』
生徒B『なぁ、男同士ってどうなの?気持ちい?』
清晴 『……』
生徒B『ホモだって言いふらされたくなかったらさ、やらせろよ』
清晴 『ぇ……そんな…』
生徒B『勘違いすんなよ。俺お前のことなんか全っ然好きじゃねぇから』
清晴 『っ──』

恭太 「……」
清晴 「それからずるずる。やっぱり怖くって。一人になるのは…嫌だから…」
恭太 「……好きじゃないんだよな?」

自転車を止める恭太

清晴 「え?」
恭太 「そいつのこと、もう好きじゃないんだよな?」
清晴 「うん……そんな人だと思ってなかったし……」
恭太 「今の関係も、嫌なんだよな?」
清晴 「……うん」
恭太 「だったら嫌だって言えよ!清晴は何にも悪くねぇじゃねぇか!
    なんでお前だけ嫌な思いしてなきゃなんねぇの?
    あーーー!もう!〜〜〜〜〜っ」

恭太、ハンドルに突っ伏す

清晴 「恭太くん」
恭太 「ごめん。分かるんだよ。俺の言ってることって出来てたらとっくにしてることだって。
    でもさ、俺、こんなのやだよ……」
清晴 「……」
恭太 「俺じゃだめ?」
清晴 「え?」
恭太 「一人になんかさせないよ。俺は何があっても清晴の味方でいるから。
    それじゃ…駄目かな……」
清晴 「……」
恭太 「俺馬鹿だから、そんなことしか考えつかない……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・教室

教師 「──今日でテストは終了!ということで、明日から通常授業だからな。
    間違えんなよー」
生徒A「起立、礼」
教師 「解散」

散らばっていく生徒達

友達 「きょーたー、なんか用事ある?飯食ってかねぇ?」
恭太 「あぁ、ゴメン。俺今日パス」
友達 「まーじで?せっかく今日でテスト終わりだってのにー」
恭太 「すまんすまん!じゃな!」
友達 「おーう」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・清晴の教室前

もう生徒が殆どいない廊下
教室の前で話している女子生徒に話しかける

恭太 「あのー、三上いる?」
生徒C「三上くん?確かもう帰ったよ」
恭太 「あーっと、そっか。ありがとう」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・下駄箱

靴を履き替えようとしている恭太
ふと、清晴の靴箱を見るとまだ靴がある

恭太 「……なんだ、いるじゃん」

履き替えずに戻っていく

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・廊下

恭太M「ただ、話がしたかった。
    どうか笑顔でありますようにと、思った。
    なんとも無かったよと、言ってくれれば一番よかった。
    あの時々する、照れ笑いが見たかった」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・四階階段〜廊下

階段を上がって四階の廊下を歩いてくる恭太

恭太M「今の生活が無くなってしまっても、俺だけが味方でいるだなんて
    自分勝手なことを、清晴は嬉しいと言って笑ったんだ」

奥の教室から物音が聞こえる

恭太M「どうすれば一番良かったなんて、全然、分からなかった」

清晴 「…嫌…っ!」
恭太 「きよ……はる……」

走り出す恭太

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・空き教室

無音
扉を開けて、一瞬、中の光景に立ち止まる
生徒Bに押し倒されている清晴

生徒B、なんだお前と叫ぶ
それ目掛けて走っていく恭太
掴みかかり、清晴からはがす

脱がされた清晴を見て恭太、生徒Bに殴りかかる

殴り合いになる
恭太の名前を叫ぶ清晴

教師三人が入ってくる
恭太羽交い絞めにされるが、なおも殴ろうとする

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・自室

ベッドの上で布団を頭までかぶっている恭太

恭太M「何が正しいとか、何が悪いとか、誰が悪いとか、
    もうどうでもよくて、清晴が望んでることも結局分からなかった。
    ただ、あいつがあんなこと、いつまでもやられてるのが
    どうしようも無く嫌で。俺が耐えられなかった。
    偽善心で説明がつくのなら、それでよかったのに──」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・教室

恭太、ドアを開けると、一斉に見られる
黙って席につく恭太

友達 「久しぶり。一週間停学ってさ、お前なんにも悪くねぇのにな!」
恭太 「……」
友達 「まぁ、気にすんなよな。あいつは退学になったらしいし」
恭太 「え?」
友達 「あれ?お前知らなかったの?お前が殴った奴、退学だってさ」
恭太 「そうか……。あの…三上は?どうしてる?」
友達 「三上?あー、あの被害者の子。さぁ?あんまり見てないけど」
恭太 「……」
友達 「なんかさー、若干薄れつつはあるけど、やっぱ噂周っててさ。
    その、三上って奴?がお前とあいつを誘ったんだろーとかって」
恭太 「え?」
友達 「根も葉もない噂だよ。っつか可哀想だよなー。
    俺男に犯されたら立ち直れねぇもん」
恭太 「……」
友達 「恭太?」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・職員室

職員室に静かに入ってくる恭太

教師 「あぁ、土屋(つちや)。大丈夫か?」
恭太 「うん。あの」
教師 「ん?」
恭太 「三上は…どうしてますか…」
教師 「あぁ、あいつな」
恭太 「?」
教師 「辞めたよ」
恭太 「え……?」
教師 「説得したんだけどな」
恭太 「……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・下駄箱

清晴の靴箱の名前シールがはがされている

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・空き教室

清晴がいつも見ていた窓から外を眺める恭太
夕日が沈んでいく空を見る
涙を流す恭太

恭太M「あいつはいつもここから何を見ていたんだろう。
    ただビルの谷間に消えていく夕日を見つめていたんだろうか」

清晴 『ありがとう、ごめんね』

恭太M「申し訳なさそうに言うその口癖に、どうやって答えればいいか分からなかった。
    あの時あいつは泣いていた」

恭太 「どうすりゃよかったんだよ……」

その場に座り込んで泣く

恭太M「あの帰り道、回された腕の感触はもう残っていないのに。
    あいつが月の話をする声は、忘れられなかった」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・空き教室

恭太、グラウンドから四階の教室を見上げている
教室の窓から外をぼーっと眺めている清晴

友達 「きょーた!行くぞ!」
恭太 「お、おう!待って!」

友達の元へ走っていく恭太

窓から下を見る清晴
走っていく恭太を目で追っている

清晴 「きょーた……。きょうた…」

微笑む

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・コンビニ

レジで接客をしている恭太

恭太 「百二十円になりま──」

清晴がいる









おわり